第99回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題106〜120)

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 3か月の乳児。意識障害のため搬入された。母親は「昨日30cmの高さのソファから転落したが普段と変わりない様子だった。今朝になって様子がおかしいので救急車を呼んだ」と看護師に話す。頭部CTを施行後、医師から「頭蓋内に出血箇所が複数あり、意識障害を起こしている。このまま出血が広がるようなら手術の必要がある」と病状説明がされた。

【問題106】 乳児はウトウトと眠っている状態である。対応で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 意識レベルは視線が合うかどうかによって評価する。
    • 眠っている状態であり、視線が合うかどうかは確認できない。この状態での意識レベルの評価は、呼びかけに対する反応で評価する。
  2. 経皮的動脈血酸素飽和度モニターを装着する。
    • 舌根沈下による気道閉塞などの可能性があるので、酸素飽和度をモニタリングし、換気状態を評価する。
  3. 啼泣があればミルクを与える。
    • 意識障害の状態では、誤嚥の危険性があるので、経口摂取は行わない。
  4. 体幹を抑制する。
    • 現時点では体幹抑制の必要はない。

【問題107】 医師からの説明直後に、看護師が「ソファから落ちたのは昨日だったんですよね」と母親に確認すると、母親は「本当は3日前です。この子はよく動くので寝返りをうって落ちたんです。子どもが目を覚ましたらなるべく早く連れて帰りたいんだけど」と落ち着かない様子で話した。この状況のアセスメントで最も適切なのはどれか。

正解 1

  1. 子どもの状態と母親の説明とに整合性がない。
    • 乳児はまだ3か月であり、よく動いて寝返りをうつ、ということは考えられない。子どもの状態と母親の説明とに整合性がなく、虐待が疑われる。
  2. 看護師が受傷日を聞き間違えている。
  3. 母親は受傷した日を勘違いしている。
  4. 母親は子どもの病状を理解している。

【問題108】 小児病棟に入院すると、母親は携帯電話を気にしながら「早く家に帰らないと夫にしかられる」と話し、看護師が病室を離れた間に「明日また来ます」というメモを残して帰宅してしまった。対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 1,3

  1. 児への虐待の可能性があると児童相談所に通告する。
    • 児童虐待が疑われる場合は、児童相談所に通告する。
  2. 母親に児への虐待を疑っていることを電話で伝える。
    • 母親から話を聞くことなく、電話で虐待を指摘することは、配慮に欠ける。
  3. 母親が面会に来たら育児環境について話し合う。
    • 母親へ配慮した対応が必要であり、直接話し合って、育児環境や母親自身の気持ちを聞く。
  4. 電話をかけて母親を病院に呼び戻す。
    • 勝手に帰宅してしまうような状況であり、電話をしても戻ってくるとは考えにくい。
  5. 母親にDVシェルターを紹介する。
    • 「早く家に帰らないと夫にしかられる」という発言からDVの可能性もあるが、これだけの情報では、まだ判断できない。

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 32歳の初産婦。会社員。妊娠8週0日。身長160cm、体重50kg(非妊時53kg)。「食べると気持ちが悪くなるので、妊娠前のようには食事がとれない。3食をとるようにがんばっているが、よく食べられたと思ったときに限ってその後に吐いてしまう」と話す。

【問題109】 妊婦の訴えに対するアセスメントに必要な情報で優先度が高いのはどれか。

正解 4

  1. 腹囲
    • 胎児発育の目安になるが、現時点では優先度は高くない。
  2. Hb値
    • 妊娠中で食事量も十分ではないので、貧血が起こる可能性はあるが、現時点では優先度は高くない。
  3. 排便状況
    • 食事の摂取量が十分ではないので、排便量は減るが、現時点では優先度は高くない。
  4. 尿ケトン体
    • 妊娠悪阻では、食事が十分にとれなかったり、摂取しても嘔吐してしまうことにより、糖質の摂取が不十分となる。そのため、脂肪が代替エネルギーとなり、ケトン体が尿中に大量に分泌される。

【問題110】 食事の摂取方法に関する説明で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 少量ずつ食べる。
    • 少量ずつ食べるようにする。
  2. 糖分を多くとる。
    • 栄養価にこだわらずに、食べられる物を食べる。
  3. 水分摂取は控える。
    • 脱水予防のためにも、水分の摂取は必要である。
  4. 時間を決めて食べる。
    • 食べられる時に食べるようにする。
  5. サプリメントをとる。
    • 現時点でサプリメントの服用が必要とはいえない。

【問題111】 妊娠20週0日。「気分はとても良いです。元気になったら、夫は家事をしてくれなくなって、私が妊娠しているのを忘れているかのようです。私もこのお腹に赤ちゃんがいるって、まだ信じられない感じがします」と話す。対応で最も適切なのはどれか。

正解 2

  1. 男性が父親としての役割を意識するのは出産後であることを説明する。
  2. 夫とともに出産準備教室に参加することを勧める。
    • 参加することで父親としての自覚が培われる。また、妊娠・出産への理解を深めるためにも、参加することは重要である。
  3. 夫に家事を手伝うように看護師から伝える。
  4. 夫の立会い分娩を提案する。

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 35歳の初産婦。妊娠38週0日。昨日午後8時に陣痛が開始し、本日の午前1時に入院した。午後1時に羊水流出感があり、診察で破水と子宮口全開大が確認された。午後3時30分に児娩出、午後3時45分に胎盤娩出となった。分娩時出血量は600mlであった。

【問題112】 分娩経過のアセスメントで正しいのはどれか。

正解 4

  1. 早産である。
    • 妊娠22〜37週未満の分娩を早産という。妊娠38週0日は正期産である。
  2. 早期破水である。
    • 子宮口全開大なので、適時破水である。
  3. 分娩所要時間は19時間30分である。
    • 分娩所要時間は、陣痛開始から胎盤娩出までである。この場合では、19時間45分である。
  4. 分娩時出血量は正常範囲を逸脱している。
    • 分娩時出血量が500ml以上である場合、出血量が過剰であると判断される。

【問題113】 産褥1日。体温37.1℃。脈拍66/分。血圧120/70mmHg。子宮底臍高、子宮収縮は輪状マッサージ後に良好、赤色悪露が中等量みられる。会陰縫合部痛があり、尿意ははっきりしない。乳房緊満はなく、乳腺開口は左右とも4本程度である。褥婦への生活指導で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 「授乳は休みましょう」
    • 授乳はオキシトシン分泌を促進し、子宮収縮を促進させるので、授乳を休む必要はない。
  2. 「乳房を温罨法しましょう」
    • 乳房の温罨法は、乳汁分泌を促すのに効果的である。
  3. 「骨盤底筋体操をしましょう」
    • 骨盤底筋体操は、出産後の尿失禁を解消するのに効果的である。
  4. 「3.4時間ごとに排尿しましょう」
    • 子宮収縮を促すためには、こまめに排尿することが重要である。

【問題114】 産褥5日。体温36.8℃。脈拍70/分。血圧120/72mmHg。子宮底臍下4横指、子宮収縮良好、赤褐色悪露少量。母乳分泌は良好である。Hb10.6g/dl、Ht 31%。食事指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 2,5

  1. 塩分摂取量は7g未満/日とする。
    • 血圧は正常範囲であり、通常の摂取量でよい。妊娠高血圧症候群の場合は、7g未満/日の摂取を目安とする。
  2. 鉄分を多く含む食品の摂取を勧める。
    • Hbがやや低下しており、貧血傾向であるので、鉄分の摂取が必要である。また、鉄分は産後の疲労回復にも重要である。
  3. 緑茶や紅茶で十分な水分摂取を行う。
    • 緑茶や紅茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を阻害するので、摂取を控える。
  4. 脂肪エネルギー比率を20%未満にする。
    • 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、30歳以上の脂肪エネルギー比率を、20%以上25%未満としている。
  5. エネルギーの付加は350kcal/日程度とする。
    • 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、授乳期での付加エネルギー量を+350Kcal/日程度としている。

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 20歳の男性。両親は5年前に事故で他界し、73歳の祖母との2人暮らし。元来内気で友人も少ない。1年前から「心臓がとける」、「動くと心臓が変形して止まりそう」と言い、大学を中退し家に引きこもっている。家では1日中パソコンに向かい昼夜逆転となり、祖母が注意をするが聞き入れない。他県に住んでいた親戚がこのような状況に気付き、本人を連れて精神科病院を受診し、統合失調症と診断され任意入院となった。

【問題115】 みられる症状はどれか。

正解 2

  1. 解離
    • 解離とは、知識や記憶、周囲の知覚などの機能が破綻する状態をいう。
  2. 体感幻覚
    • 体感幻覚とは、皮膚感覚や内臓感覚の幻覚のことである。
  3. 心気妄想
    • 心気妄想とは、医学的に病気ではないと判断されているのに、病気にかかっていると思い込むことである。
  4. 被害妄想
    • 被害妄想とは、他者から危害を加えられていると思い込む妄想である。
  5. 思考奔逸
    • 思考奔逸とは、思考が活発に次から次へと現れてくるために、思考が逸れて目的観念を失う状態である。躁状態でよくみられる。観念奔逸ともいう。

【問題116】 入院2か月、心臓に対する不安は継続しているものの症状はかなり軽減し、短時間の散歩もできるようになった。薬は看護師からその都度手渡されると拒否することなく服用している。病棟では1人で過ごすことが多く、誘われれば将棋やトランプに参加する。患者は1か月以内に自宅に退院したいと希望している。退院に向けて優先されるのはどれか。

正解 3

  1. 洗濯の指導
  2. 料理教室の勧め
  3. 服薬自己管理に向けた支援
    • 退院後も服薬は継続される。退院に向けて服薬管理の訓練をしていくことが重要である。
  4. スポーツを中心とした活動療法の勧め

【問題117】 退院に際し、患者が健康管理について心配しているため訪問看護を利用することとなった。祖母は、入院前は患者の世話や家事一切を行っていたが、最近は変形性膝関節症のため患者の部屋がある2階への行き来や掃除が負担になっている。訪問看護以外で適切な社会資源はどれか。2つ選べ。

正解 2,5

  1. 就労継続支援
    • 就労継続支援とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に就労の機会を提供し、必要な訓練等を供与するものである。現時点では時期尚早である。
  2. 精神科デイケア
    • 精神科デイケアでは、自宅から通所し、グループ活動を行う。リハビリテーションとともに、祖母の負担軽減にもつながる。
  3. グループホーム
    • グループホームとは、知的障害者や精神障害者が、専門スタッフ等の援助を受けながら共同生活をする施設である。自宅での療養が可能であり、適切でない。
  4. 社会適応訓練事業
    • 社会適応訓練事業とは、事業者に一定期間預け、職業を与えるとともに、社会生活の適応に必要な訓練を行う事業である。現時点では時期尚早である。
  5. ホームヘルプサービス
    • ホームヘルプサービスでは、ホームヘルパーが日常生活に必要な援助を行う。祖母の負担軽減につながる。

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 62歳の男性。仕事柄、海外への出張が多い。元来責任感が強く、家庭や会社での信頼も厚かった。東南アジアから10日前に帰国してから全身の倦怠感を訴えていた。本日、午後9時ごろ突如手の震えが出現し「昨年死んだはずの友人が部屋に来ている」と大声で叫びだしたため、家族に伴われて救急外来を受診した。体温36.5℃。脈拍72/分。血圧124/76mmHg。眼球結膜に黄染が認められ、血液検査が実施された。

【問題118】 診察室ではうつろな表情で落ち着きがない様子であるが、興奮することはない。外来での対応で最も優先度が高いのはどれか。

正解 1

  1. 頭部CT
    • 頭部CTは、身体への侵襲が少なく安全に行える検査である。また、出現している精神症状が脳器質的疾患によるものか判断するためにも必要である。
  2. 腰椎穿刺
    • 腰椎穿刺は、身体への侵襲が大きく、安易には行えない。
  3. 隔離室への保護
    • 隔離室への保護は、人権の問題からも、安易には行えない。
  4. 抗精神病薬の投与
    • 抗精神病薬の投与は、病名が確定してから行うべきであり、安易には行えない。

【問題119】 患者は看護師に「自分は命を狙われている。助けてくれ」と話し始めた。対応で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 「安静が必要なので、静かにしていて下さい」
  2. 「あなたが命を狙われているはずがありません」
  3. 「そうですね。窓の外に隠れている人がいるかもしれませんね」
  4. 「もしそのようなことがあっても、私達がいますから安心して下さい」
    • 肯定や否定をすることで、幻視や妄想を助長させる可能性がある。患者に安心感を与える対応が必要である。

【問題120】 血液検査で、総ビリルビン3.6mg/dl、直接ビリルビン2.0mg/dl、AST(GOT)3,500IU/l、ALT(GPT)4,200IU/l、ALP470IU/l、プロトロンビン活性(PT%)35%(基準80〜120)が認められた。最も考えられるのはどれか。

正解 2

血液検査の結果から、身体疾患による精神障害であると考えられる。

  1. 統合失調症
    • 統合失調症は、内因性疾患である。
  2. 症状精神病
    • 症状精神病とは、脳以外の身体疾患で起こる精神障害をいう。この事例では、肝機能の異常が認められる。
  3. パニック障害
    • パニック障害は、心因性疾患である。
  4. 身体表現性障害
    • 身体表現性障害とは、身体にかかわる苦痛を訴えるものの、医学的検査では異常が認められない障害である。血液検査で異常があり適切でない。

このページの先頭へ

国試対策トップへ