第99回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題47〜66)

【問題47】 腕からの採血時の駆血法で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 3分以上駆血する。
    • 1分以上駆血すると、血液の濃縮などにより検査値に変動が起きる場合がある。血管を選ぶのに時間を要する場合は一時駆血帯を緩め、2分間程度経過してから巻きなおす。
  2. 駆血してから手を握ってもらう。
    • 静脈を怒張させ、採血しやすくするため、母指を中にして握ってもらう。
  3. 刺入予定部位より末梢側を駆血する。
    • 刺入部位より5〜10cm中枢側を駆血する。
  4. 動脈の拍動が止まる強さで駆血する。
    • 末梢の脈拍を感知できるよう、静脈の流れのみを止める強さで駆血する。

【問題48】 63歳の女性。末期の悪性腫瘍で在宅療養となった。公的保険で受けられるサービスで正しいのはどれか。

正解 1

  1. 訪問看護は医療保険の対象となる。
    • 末期癌は医療保険の対象となる。
  2. 訪問看護の回数は週3回に限られる。
    • 医療保険の訪問看護の回数は原則週3回であるが、末期の悪性腫瘍、厚生労働大臣が定める疾患の場合は、回数の制限はない。
  3. 訪問看護の回数は1日1回に限られる。
    • 医療保険の訪問看護は1日1回、1回の訪問につき30〜90分を標準とし、120分を超えないとなっている。ただし、緊急時訪問看護加算も可能であり、複数回の訪問も可能である。
  4. 介護保険によるサービスは受けられない。
    • 介護保険のサービスを受けられるのは、65歳以上である。ただし、40歳以上65歳未満の者であっても、介護保険法で定める特定疾病に該当する場合はサービスを受けられる。末期癌は特定疾病の一つであるので、サービスを受けられる。

【問題49】 営業職の男性。「このごろ運転中に居眠りをしそうになる。妻からはいびきがひどいと言われている」と受診した。寝つきは悪くないがいつも寝足りない感じがあり、毎朝頭痛がする。服薬歴と既往歴とはなく、半年前の定期健康診断で異常はなかった。身長160cm、体重76.8kg。脈拍78/分。血圧140/78mmHg。最も考えられるのはどれか。

正解 1

  1. 睡眠時無呼吸症候群
    • ひどいいびき、昼間の強い眠気、寝足りない感じ、起床時の頭痛など、全て睡眠時無呼吸症候群の典型的な病状である。また、BMIからこの男性が肥満であることもポイントとなる。
  2. 低血糖症状
    • 低血糖症状は、自律神経症状として空腹、冷汗、震え、動悸など、中枢神経症状として意識障害、けいれん、頭痛、イライラ感などがある。
  3. もやもや病
    • もやもや病の病状は、けいれん発作、脳出血、片麻痺、頭痛などである。
  4. うつ病
    • 抑うつ気分、興味と喜びの喪失、易疲労性の3つが、うつ病にとって最も典型的な症状とされている。

【問題50】 パソコンへのデータ入力を職業とする人の健康障害を予防する方法で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 椅子に深く腰掛けて背もたれに背をあてる。
    • 背中を丸くして浅く腰掛けると腰に負担がかかる。椅子に深く腰掛けて背もたれに背をあてる姿勢が望ましい。
  2. 500ルクス程度の直接照明で照度を確保する。
    • キーボードや入力用原稿など水平作業面の明るさは300ルクス以上、ディスプレイ画面は500ルクス以下が理想である。ただし、直接照明であると、ディスプレイ画面からの照り返しが強く眼が疲れやすい。
  3. ディスプレイ画面と眼との視距離は30cm以内とする。
    • 40cm以上の視距離が確保できるようにする。
  4. 3時間を超える連続作業には5分の休止時間を設ける。
    • 1時間の連続作業で10〜15分の休止時間を設けるようにする。

【問題51】 Mooreの提唱した手術後の回復過程の第1相(異化期)の生体反応はどれか。

正解 2

Mooreは患者の術後経過を病像の移り変わりによって4つの相(病期)に区分している。

  1. 尿量の増加
    • 第1相では、下垂体後葉からADH(抗利尿ホルモン)の分泌が促進され、腎臓での水とナトリウムの再吸収を促すため乏尿となる。尿量は増加せず減少する。
  2. 血糖値の上昇
    • 副腎皮質ホルモンの分泌が促進され、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の分泌も促進される。そのため、糖新生が亢進し、血糖値が上昇する。
  3. 脂肪組織の修復
    • 脂肪組織の修復・蓄積は第3、4相でみられる。
  4. 腸蠕動運動の再開
    • 腸蠕動運動の再開は第2相でみられる。

【問題52】 64歳の女性。下咽頭癌と診断され放射線療法を開始した。治療中の生活指導で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 脱毛が起こるのであらかじめ髪を短く切る。
    • 頭部への照射の場合は脱毛するが、別の部位の照射では脱毛しない。下咽頭癌の放射線療法なので、頭部への照射はない。
  2. 倦怠感が出現したら治療を休んでよい。
    • 治療は継続して行うことで効果が得られる。治療は中断せず、病状の予防・軽減に努めるべきである。
  3. 痛みを伴う口内炎では含嗽は控える。
    • 放射線療法の副作用として、口内炎を発症することがある。含嗽を控えるのではなく、栄養摂取の維持・改善、刺激物摂取の回避、口腔内の洗浄などに努める。
  4. 入浴時に照射部位をこすらない。
    • 照射部位の皮膚が弱くなっているので、こする、石鹸で洗うなどの物理的・化学的刺激は避けるようにする。また、マークを消さないようにすることも大切である。

【問題53】 セルフケア行動継続への援助で適切なのはどれか。

正解 3

  1. 目標評価は看護師が行い患者に伝える。
    • 目標評価は看護師中心ではなく、患者中心で行うのが適切である。
  2. 達成可能な目標を看護師が立て患者に提示する。
    • 目標を立てるのは看護師中心ではなく、患者中心で行うのが適切である。
  3. 行動の定着には習慣化が不可欠であることを伝える。
    • 行動継続のためには、患者本人が自分に適したヘルスケアを身に付け、習慣化することが大切である。
  4. それまでの経験は捨て新たな方法で取り組むよう促す。
    • 看護師が知識等の提供をするのは良いが、あくまで患者本人が自分に適した方法を選択・実行するべきである。

【問題54】 大地震後、自家用車内での生活を余儀なくされた避難住民への肺塞栓症予防の生活指導で適切なのはどれか。

正解 3

  1. 窓を常時開けて十分に換気する。
    • 狭い車内での生活では換気をすることは大切であるが、肺塞栓症予防との関連はない。
  2. 上半身を高めにして睡眠をとる。
    • 上半身を高めにして睡眠をとると呼吸が楽になるが、肺塞栓症予防との関連はない。
  3. 座っている間も積極的に足の運動をする。
    • こまめに足を動かすことで、血流の停滞を防ぐことができ、血栓予防になる。
  4. アルコール摂取などで熟眠できるようにする。
    • アルコールの摂取は脱水になりやすくなる。脱水状態では血栓が起こりやすいので、肺塞栓症予防の指導としては適切でない。

【問題55】 食道癌根治術後の患者で正しいのはどれか。

正解 3

  1. ダンピング症状は起こらない。
    • 食道を切除し、胃を代用食道にするため、摂取した食事が急速に小腸に流れ込み、ダンピング症状を起こしやすい。
  2. 食後に逆流誤嚥の危険性はない。
    • 食道下部が切除されると、下部食道括約筋が消失するため、胃から食道への逆流防止機構が働かなくなり、逆流誤嚥を起こしやすい。
  3. 呼吸機能低下によって息切れが生じやすい。
    • 開胸による呼吸筋の障害や気管周囲のリンパ節郭清による呼吸機能の低下などで、息切れが生じやすい。
  4. 反回神経麻痺によって構音障害が生じやすい。
    • 反回神経麻痺によって嗄声(声がかれる状態)がみられることはある。構音障害は、発音が正しく出来ない症状である。

【問題56】 59歳の男性。両肩と胸部の皮膚に異常をきたしたため来院した。皮膚の写真を示す。聴取する項目で優先度が高いのはどれか。

第99回看護師国家試験一般問題解説56

正解 2

写真からクモ状血管腫であると考えられる。

  1. 渡航歴
  2. 飲酒歴
    • クモ状血管腫は、拡張した血管を中心に毛細血管が放射状に伸びてクモ状に見えるもので、肝硬変患者、妊婦、経口避妊薬を使用している女性にみられることが多い。肝硬変と関連する飲酒歴の聴取の優先度が高い。
  3. 喫煙歴
  4. 予防接種歴

【問題57】 網膜剥離を起こした患者の訴えはどれか。

正解 4

  1. 「眼が乾く」
    • ドライアイなどの症状である。
  2. 「物が二重に見える」
    • 単眼複視と両眼複視があり、単眼複視は片眼を開けているときにのみ起こり、両眼複視はどちらかの眼を閉じると消失する。単眼複視の原因には白内障や乱視、水晶体偏位などがあり、両眼複視の原因には眼筋麻痺などがある。
  3. 「明るいところがすごくまぶしい」
    • 羞明といい、眼内へ大量の光が入る場合や光に対する過敏性が原因になる。角膜炎や結膜炎、虹彩毛様体炎、白内障、緑内障などで起こる。
  4. 「眼の中にカーテンが引かれた感じ」
    • 網膜剥離の症状として、小さなゴミや虫のようなものが見える飛蚊症、光がないのにチカチカとした光が見える光視症、カーテンが引かれたように物が見えにくくなる視野欠損、視力低下がある。

【問題58】 54歳の女性。激しい頭痛と嘔吐の後、意識を消失したため搬入された。呼吸数12/分、不規則。脈拍50/分。血圧210/120mmHg。瞳孔不同がみられる。考えられるのはどれか。

正解 2

頭痛、嘔吐、意識消失の症状から、脳疾患である可能性が高い。

  1. 一過性脳虚血
    • 一過性脳虚血は、脳の循環障害により起こる一過性の神経症状で、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れる。24時間以内、通常数分以内に症状は消失する。
  2. 脳ヘルニア
    • 呼吸数低下、徐脈、血圧上昇、瞳孔不同がみられており、脳ヘルニアによる頭蓋内圧亢進症状と考えられる。
  3. てんかん
    • てんかんは、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作であるが、頭蓋内圧亢進症状は生じない。
  4. 片頭痛
    • 片頭痛では頭蓋内圧亢進症状は生じない。

【問題59】 加齢による変化で性差が最も顕著なのはどれか。

正解 3

加齢による変化には個体差がある。身体的・生理的機能の変化から性差が顕著なものを考える。

  1. 聴力
    • 内耳蝸牛の感覚細胞の障害、神経経路や中枢神経系の障害、内耳蝸牛の血管障害による老人性難聴が生じる。
  2. 筋力
    • 運動量の減少、低栄養などにより、筋の萎縮、筋力低下が生じる。
  3. 骨塩量
    • 骨形成の低下やビタミンD作用の低下などにより、骨芽細胞の機能が低下し、骨粗鬆症(老人性骨粗鬆症)を発症する。特に女性の場合は、 閉経後にエストロゲンの分泌が低下し、骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症)になりやすい。
  4. 認知機能
    • 脳の重量や容積の減少、神経細胞の減少などにより、記憶力、記銘力の低下、知覚・反射の遅れなどが生じる。

【問題60】 社会福祉法における福祉サービス利用援助事業で支援計画に基づき支援を実施するのは誰か。

正解 1

  1. 生活支援員
    • 福祉サービス利用援助事業とは、認知症高齢者や知的障害者、精神障害者などの判断能力が十分でない者に対し、福祉サービスの利用援助や、日常的な金銭管理などの援助を行うものである。利用者本人が支援計画や契約内容に合意した上で、利用者本人と社会福祉協議会等が契約を結び、契約に基づく援助は、生活支援員が行う。
  2. 市町村職員
  3. かかりつけ医
  4. 訪問介護員(ホームヘルパー)

【問題61】 82歳の男性。介護老人保健施設に入所中。脳卒中による片麻痺はあるが他に慢性疾患はない。8月のある朝ケアワーカーから元気がないと看護師に相談があった。体温37.5℃、意識レベルや他のバイタルサインに異常はない。皮膚は乾燥気味。最後の排尿は昨夜で濃縮尿だが混濁や排尿時痛はなかった。下痢や嘔吐はない。対応で優先度が高いのはどれか。

正解 2

微熱、皮膚の乾燥、濃縮尿から脱水傾向であると推測できる。

  1. 絶飲食とする。
    • 絶飲食は脱水症を悪化させる。
  2. 水分を摂取してもらう。
    • 脱水傾向の患者に対しては、水分の摂取が最も優先される。
  3. 角砂糖を摂取してもらう。
    • 角砂糖の摂取は、低血糖症状の場合である。
  4. 抗菌薬の使用を医師と相談する。
    • 感染は明らかではないので、抗菌薬の使用は最優先ではない。

【問題62】 加齢による薬物動態への影響で正しいのはどれか。

正解 3

  1. 半減期が短縮する。
    • 肝代謝の低下や腎排泄の低下により、一般的に半減期は延長される。
  2. 水溶性薬物の血漿濃度が低下する。
    • 体内の水分量の減少により、水溶性薬物の血漿濃度は高くなる傾向がある。
  3. 脂溶性薬物が体内に蓄積しやすくなる。
    • 脂肪の増大により、脂溶性薬物は体内に蓄積しやすくなる。
  4. 血漿蛋白と結合する薬物は薬効が低下する。
    • 血清アルブミンが減少し、薬物と血漿蛋白の結合率が低下するので、薬物の効果は増強する。

【問題63】 子供の発達・発育で正しいのはどれか。

正解 2

  1. 身体各部の発達の臨界期は一定である。
    • 臨界期は身体各部により異なり一定ではない。
  2. 脳神経系は乳幼児期に急速に発達する。
    • スキャモンの発達曲線によると、乳幼児期に脳神経は成人の約80%ほど発達する。
  3. 基本的な運動発達は脚部から上方へ向かう。
    • 運動発達は頭部から脚部へ一定の順序と方向性がある。
  4. 新生児期には遺伝よりも環境の影響が大きい。
    • 新生児期では遺伝的な影響の方が大きい。

【問題64】 乳幼児のアタッチメント(愛着)の成立に必要な関わりはどれか。

正解 2

アタッチメントは、養育者と乳幼児との相互関係によって成立する。

  1. 就寝前にビデオを見せる。
  2. 泣いているときに抱っこをする。
    • 乳幼児の様々なサインを受けとめることやスキンシップを図ることは、アタッチメントの成立に重要である。
  3. けんかのときの謝り方を教える。
  4. 危ないことをしていたら注意する。

【問題65】 親の付き添いなしで入院している2歳児。入院当初は号泣し、介助しても食事を受け付けなかった。入院が長期になるにつれ周囲に関心を示し、看護師の世話を受け入れるようになった。子どもの反応のアセスメントで誤っているのはどれか。

正解 4

分離不安には「抗議」「絶望」「決別」の3段階がある。

  1. 号泣は別離の初期にしばしば認められる反応である。
    • 分離直後は激しく号泣し、分離に対して抗議をする。
  2. 食事を受け付けないことは別離に対する抗議の表れである。
    • 親以外からのケアを拒むのは、分離に対する抗議である。
  3. 周囲に関心を示すようになっても親との面会は重要である。
    • 周囲に関心を示すようになっても、親の存在は必要不可欠であり、親との面会は重要である。
  4. 看護師の世話を受け入れることは別離のストレスが消失したことを示す。
    • 親を追い求める気持ちを失ったことの表れであり、分離のストレスが消失したわけではない。親が面会に来ても、関心を示さなかったり拒否したりすることもみられる。

【問題66】 最近10年の乳幼児の誤飲で最も頻度が高いのはどれか。

正解 4

  1. 硬貨
    • 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告によると、平成21年度の硬貨の誤飲は全体の4.5%である。
  2. 玩具
    • 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告によると、平成21年度の玩具の誤飲は全体の5.2%である。
  3. 医薬品
    • 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告によると、平成21年度の医薬品の誤飲は全体の17.1%で、2番目に多い。
  4. たばこ
    • 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告によると、平成21年度のたばこの誤飲は全体の31.2%で、31年連続で最も多い。

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