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第104回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題91〜105)

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(45歳、男性)は、便に血液が混じっていたため受診した。検査の結果、直腸癌と診断され、自律神経を部分温存する低位前方切除術が予定されている。

【問題91】 術後に予測されるのはどれか。

正解 1

  1. 排尿障害
    • 骨盤神経の損傷によって、排尿障害や性機能障害を起こすことがある。
  2. 輸入脚症候群
    • 輸入脚症候群では、輸入脚に溜まった胆汁や膵液が胃に逆流して嘔吐を生じる。胃切除術後にビルロートII法で再建した場合に起こりやすい。
  3. ストーマの陥没
    • 低位前方切除術は、肛門温存術式であり、ストーマは造設しない。縫合不全の危険性がある場合は、一時的にストーマを造設する場合がある。
  4. ダンピング症候群
    • ダンピング症候群は、胃切除後に起こりやすい。

【問題92】 術後1日。順調に経過し、Aさんは離床が可能になった。腹腔内にドレーンが1本留置され、術後の痛みに対しては、硬膜外チューブから持続的に鎮痛薬が投与されている。看護師がAさんに痛みの状態を尋ねると、Aさんは「まだ傷が痛いし、今日は歩けそうにありません」と話す。このときの対応で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 体動時に痛む場合は歩行しなくてよいと説明する。
  2. 歩行には看護師が付き添うことを提案する。
  3. 歩行練習を1日延期することを提案する。
  4. 鎮痛薬の追加使用を提案し歩行を促す。
    • 術後の早期離床は合併症の予防につながる。痛みがあるということなので、鎮痛薬の追加使用をした上での歩行を提案する。

【問題93】 術後6日。ドレーンから茶褐色で悪臭のある排液があった。Aさんは、体温38.2℃、呼吸数20/分、脈拍82/分、整であった。Aさんの状態で最も可能性が高いのはどれか。

正解 4

  1. 腸炎
    • 腸炎では腹痛や下痢がみられる。
  2. 胆汁瘻
    • 低位前方切除術で胆汁瘻は考えにくい。
  3. イレウス
    • イレウスでは腹痛、腹部膨満感、嘔吐、排ガス停止などがみられる。
  4. 縫合不全
    • 縫合不全は術後4〜7日に起こりやすい。発熱、茶褐色で悪臭のある排液がみられていることから、縫合不全が生じて縫合部から腸内容物が腹腔内に漏出し、腹膜炎を起こしている可能性が高い。
  5. 術後出血
    • 術後出血は術後24時間以内に多い。

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、男性、会社員)は、午後2時、会議の最中に急に発語しづらくなり、右上下肢に力が入らなくなったため、同僚に連れられて救急外来を受診した。既往歴に特記すべきことはない。来院時、ジャパン・コーマ・スケール(JCS)Ⅰ-3、瞳孔径は両側2.0mm。呼吸数18/分、脈拍60〜80/分、不整で、血圧176/100mmHg。右上下肢に麻痺がある。午後4時、Aさんの頭部CTの所見で特に異常は認められなかったが、MRIの所見では左側頭葉に虚血性の病変が認められた。

【問題94】 この後の治療でまず検討されるのはどれか。

正解 1

  1. 血流の再開
    • 虚血性の病変が認められており、まずは脳の血流の再開が最優先である。
  2. 脳浮腫の予防
    • 脳浮腫は、脳梗塞発症後3〜5日がピークである。まずは血流再開が優先となる。
  3. 出血性素因の除去
    • 出血の危険性はあるが、現時点での優先度は低い。
  4. 脳血管攣縮の治療
    • 脳血管攣縮は、クモ膜下出血後4〜14日の間に起こる。

【問題95】 Aさんは心原性の脳梗塞と診断され、入院後に治療が開始された。入院後5日、意識レベルがジャパン・コーマ・スケール(JCS)Ⅱ-30まで低下した。頭部CTで出血性梗塞と脳浮腫とが認められ、気管内挿管・人工呼吸器管理を行い、マンニトールを投与してしばらく経過をみることになった。この時点の看護で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 2,4

  1. 電気毛布で保温する。
    • 脳へ流入する血液温度が上昇するため、電気毛布での保温は適切ではない。
  2. 瞳孔不同の有無を観察する。
    • 脳ヘルニアが起こると、動眼神経圧迫により瞳孔不同と対光反射の消失がみられるため、観察が必要である。
  3. 水分出納を正のバランスに管理する。
    • 脳浮腫が認められており、水分出納を正のバランスに管理することは適切ではない。
  4. Cushing(クッシング)現象に注意する。
    • 脳圧亢進による脳幹下部の乏血状態の代償作用としてクッシング現象(徐脈、血圧上昇)が生じるため、注意が必要である。
  5. ベッドを水平位にして安静を維持する。
    • 頭蓋内圧亢進を防ぐため、ベッドは軽度挙上する。

【問題96】 減圧開頭術後2週。気管内チューブは抜管され、意識レベルはジャパン・コーマ・スケール(JCS)Ⅱ-10である。右上下肢の麻痺と運動性失語とが認められ、発語は少ない。利き手は右手である。Aさんとのコミュニケーションの方法で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 筆談を促す。
    • 利き手である右手に麻痺があり、筆談は適切ではない。
  2. 文字盤を用いる。
    • 運動性失語があり、意識レベルも低下しているため、文字盤を用いるのは困難である。
  3. 大きな声で話す。
    • 普通の呼びかけで開眼するため、大きな声で話す必要はない。
  4. イラストを用いる。
    • イラストを用いてのコミュニケーションは適切である。

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(68歳、女性)は、2年前に高血圧症と診断され、カルシウム拮抗薬を服用している。高血圧をきっかけに、喫煙を1日30本から5本に減らし、飲酒を週3回から1回に減らした。また、減量に取り組み、2年間でBMIが25.5から22.9に変化した。Aさんは町の健康診査で骨密度が低下していることが分かり、整形外科を受診し骨粗鬆症と診断された。Aさんは「子どもができなかったし、夫もすでに亡くなりました。1人暮らしで家事は自分で行っているので、骨折や寝たきりの状態は困ります」と話した。

【問題97】 Aさんの骨粗鬆症の要因として最も考えられるのはどれか。

正解 2

  1. 肥満
  2. 喫煙
    • 喫煙は、骨への血液供給を減少させ、骨芽細胞の生産やカルシウムの吸収を阻害するため、骨粗鬆症の要因となる。
  3. 出産経験がないこと
  4. カルシウム拮抗薬の服用

【問題98】 Aさんの現在の移動能力をアセスメントする方法として適切なのはどれか。

正解 4(厚生労働省発表では採点除外)

  1. 開眼片脚起立時間
    • 開眼片脚起立時間は、下肢筋力やバランス能力の評価指標となる。
  2. Borg(ボルグ)スケール
    • ボルグスケールは、主観的運動強度の評価指標である。
  3. Katz(カッツ)インデックス
    • カッツインデックスは、入浴、更衣、トイレ、移乗、排尿・排便自制、食事の6つの領域のADLに関して評価する。自立の可否を評価するものであり、移動能力について細かく評価することはできない。
  4. 手段的日常生活動作(IADL)
    • 手段的日常生活動作は、日常生活を送る上で必要な動作のうち、ADLより複雑で高次な動作(電話の使い方、買い物、食事の支度、家事、洗濯、移動・外出、服薬管理、金銭管理など)を評価する。移動について何ができて何ができないかを評価できるため、選択肢の中で最も適しているが、厚生労働省の発表では、設問の状況設定が不十分で正解が得られないという理由で採点除外問題となっている。

【問題99】 看護師がAさんに運動を勧めたところ、Aさんは「子どものころから運動は苦手で運動を続ける自信がない」と答えた。指導の内容で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 歩行器を使って外出する。
    • 歩行が困難なわけではないので、歩行器は必要ない。
  2. 腰背部の背屈運動をする。
    • 骨粗鬆症がある場合は、無理をして腰背部の背屈運動をしない方がよい。
  3. 介護予防サービスを利用する。
    • 家事は自分で行っており、介護予防サービスは必要ない。また、サービスの対象(要支援)であるかどうかも不明である。
  4. 買い物のときに30分程度歩く。
    • 買い物のときに30分程度歩くことは、運動が苦手でも無理なく継続して行えることであり、適切である。

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aちゃん(生後4か月、女児)は、4、5日前から鼻汁と咳嗽とが出現し、今朝から38.0〜39.0℃の発熱があり水分摂取が困難になったため受診した。検査の結果、RSウイルス抗原陽性で急性細気管支炎と診断され入院した。入院時、口唇色と顔色はやや不良、呼吸数60/分、心拍数150/分、血圧90/52mmHgで、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)88%であった。血液検査データは、赤血球480万/μL、Hb12.8g/dL、Ht39%、白血球12,000/μL、CRP5.5mg/dL。動脈血液ガス分析は、動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)45Torr、動脈血酸素分圧(PaO2)58Torrであった。胸部エックス線撮影で肺野に異常陰影は認められない。

【問題100】 このときのAちゃんに準備すべき物品で優先度が高いのはどれか。

正解 2

  1. 加湿器
  2. 酸素吸入器
    • 低酸素血症をきたしており、酸素吸入器の優先度が高い。
  3. 人工呼吸器
  4. 酸素濃度計

【問題101】 Aちゃんは点滴静脈内注射が開始された。処置中、Aちゃんは嗄声で啼泣したが流涙はなく、激しく抵抗することもなかった。処置後に病室に戻ったが、皮膚の弾性が低下しており活気がない。看護師がAちゃんの呼吸状態と併せて観察する項目で優先度が高いのはどれか。

正解 2

  1. 哺乳力
  2. 排尿の有無
    • 流涙がなく、皮膚の弾性が低下していることから、脱水がみられている。排尿の有無を観察する必要がある。
  3. 排便の有無
  4. 瞳孔の大きさ
  5. 眼瞼結膜の色調

【問題102】 去痰薬の吸入を1日3回と、口腔内と鼻腔内の吸引を適宜実施するよう指示が出された。去痰薬の吸入後、聴診をすると呼吸数48/分、右上葉の呼吸音が減弱していた。Aちゃんの排痰を促す適切な体位はどれか。

正解 4

  1. 仰臥位
  2. 腹臥位
  3. 右側臥位
  4. 左側臥位
    • 体位ドレナージは、痰が貯留している部位が高くなるように体位をとり、痰を重力により気管支末梢から中枢方向へ排出させる方法である。右上葉の呼吸音が減弱しているため、右側を高くする左側臥位とする。

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aちゃん(10歳、女児)は、両親と3人で暮らしている。発熱と顔色不良とを主訴に受診し入院した。血液検査データは、Hb7.5g/dL、白血球75,000/μL、血小板4万/μLであった。骨髄検査の結果、急性リンパ性白血病と診断された。医師が両親とAちゃんに対し、病名と今後の抗癌薬治療および入院期間について説明した。両親はショックを受けていたが現実を受け止め、今後の治療や入院生活について質問し、経済的な不安を訴えた。

【問題103】 両親に情報提供する社会資源として最も適切なのはどれか。

正解 5

  1. 養育医療
    • 養育医療は、入院養育を必要とする未熟児が対象である。
  2. 自立支援医療
    • 自立支援医療には、育成医療、更生医療、精神通院医療があり、障害児、身体障害者、精神障害者が対象である。
  3. 児童扶養手当
    • 児童扶養手当は、離婚や死別などによって、父または母と生計を同じくしていない児童を養育している家庭が対象である。
  4. 高額療養費制度
    • 高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に、一定の自己負担限度額を超えた分についての払い戻しを受けられる制度である。
  5. 小児慢性特定疾病の医療費助成
    • 白血病は小児慢性特定疾病の対象疾病であり、医療費助成が受けられるため、最も適切である。

【問題104】 Aちゃんは中心静脈カテーテルが挿入され、寛解導入療法が開始された。抗癌薬が投与された後、維持液が100mL/時間で持続点滴されている。Aちゃんは「点滴が始まってから何回もおしっこが出ている。点滴を止めてほしい」と話している。Aちゃんの訴えを受け止めた後のAちゃんに対する看護師の説明で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 「体の中の水分が足りないから必要だよ」
  2. 「白血病細胞をやっつけるために必要だよ」
  3. 「ご飯があまり食べられないからご飯の代わりに必要だよ」
  4. 「やっつけた白血病細胞のせいで腎臓を悪くしないために必要だよ」
    • 寛解導入療法では、大量の白血病細胞が急速に破壊されるため、腫瘍細胞の中の核酸が放出されて高尿酸血症などをきたす腫瘍崩壊症候群が起こる。急性腎不全を合併するおそれがあるため、予防のため維持液の持続点滴がされている。嘘をついたり適当な説明をしたりせず、理解しやすい言葉できちんと説明する必要がある。

【問題105】 入院後4か月。Aちゃんは治療が順調に進み、退院して外来で維持療法を行うことになった。今後、学校に通学する際のAちゃんと母親に対する説明で適切なのはどれか。

正解 3

  1. 「体育は見学してください」
  2. 「授業中はお母さんが付き添いましょう」
  3. 「給食はみんなと同じものを食べてよいです」
    • 維持療法は主に経口抗癌剤を用いて行われる。感染予防は必要であるが、学校生活は通常の生活を送ることができる。
  4. 「日焼け止めクリームを塗って登校してください」
  5. 「体育館での全校集会は参加しない方がよいです」

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