第102回国家試験必修問題解説(午後問題1〜25)

【問題1】 日本の平成22年(2010年)における女性の平均寿命はどれか。

正解 3

  1. 76.39年
  2. 79.64年
  3. 86.39年
    • 平成22年簡易生命表によると、男性の平均寿命は79.64年、女性の平均寿命は86.39年である。
  4. 89.64年

【問題2】 炭坑従事者に起こりやすい職業性疾患はどれか。

正解 2

  1. 潜函病
    • 潜函病とは、潜函作業などで高圧環境下にいた者が、地上に戻って急激な圧低下にさらされた際に起こる減圧症である。
  2. じん肺
    • じん肺は、粉塵や微粒子を長期間吸引することによって起こり、炭坑、鉱山、トンネル掘削現場などの従事者に多い。
  3. 中皮腫
    • 中皮腫はアスベストの吸引によって起こる。
  4. 白ろう病
    • 白ろう病は、削岩機やチェーンソーなどの振動工具を長期間使用することによって起こる振動障害である。四肢末梢の血行障害によって、レイノー現象やしびれ、感覚鈍化などが生じる。

【問題3】 介護保険制度における施設サービス費の原則的な利用者負担の割合はどれか。

正解 1

  1. 1割
    • 原則として施設サービス費の利用者負担は1割である。
  2. 2割
  3. 3割
  4. 5割

【問題4】 倫理原則の「善行」はどれか。

正解 2

倫理原則には、「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」の4つがある。

  1. 患者に身体的損傷を与えない。
    • 無危害原則である。
  2. 患者に利益をもたらす医療を提供する。
    • 善行原則である。
  3. すべての人々に平等に医療を提供する。
    • 正義原則である。
  4. 患者が自己決定し選択した内容を尊重する。
    • 自律尊重原則である。

【問題5】 マズロー,A.H.の基本的欲求階層論で最も低次の欲求はどれか。

正解 3

  1. 自己実現の欲求
    • 自己実現の欲求とは、自分の能力や可能性を最大限発揮したいという欲求である。マズローの欲求段階は最も高次の第5段階である。
  2. 所属と愛の欲求
    • 所属と愛の欲求とは、友人や家族など周囲の人々と関わりたいという欲求である。マズローの欲求段階は第3段階である。
  3. 生理的欲求
    • 生理的欲求とは、食欲や睡眠欲など人間が生きるうえでの基本的な欲求である。マズローの欲求段階は最も低次の第1段階である。
  4. 安全の欲求
    • 安全の欲求とは、苦痛や不安から解放されたいという欲求である。マズローの欲求段階は第2段階である。

【問題6】 標準的な発育をしている児において体重が出生時の約2倍になる月齢はどれか。

正解 2

  1. 1か月
  2. 3か月
    • 出生後の体重は、生理的体重減少を経て、最初の2〜3か月間は1日に25〜30gずつ増加し、生後3〜4か月で出生時の約2倍になる。また、生後1年で、出生時体重の約3倍になる。
  3. 6か月
  4. 9か月

【問題7】 標準的な発育をしている児において脳重量が成人の約90%に達する年齢はどれか。

正解 1

  1. 5〜6 歳
    • 出生時の脳重量は約400gで、5〜6 歳で成人の脳重量(約1,400g)の90%に達する。
  2. 8〜9 歳
  3. 11〜12 歳
  4. 15〜16 歳

【問題8】 乳児期の特徴はどれか。

正解 1

  1. 分離不安
    • 分離不安とは、母親などの依存対象者との物理的・心理的分離に伴う不安のことをいい、乳児期から学童期にかけての特徴である。
  2. 第一次反抗期
    • 第一次反抗期は、2〜4歳頃の幼児期にあらわれる。自我が芽生え、親に対して「イヤ」「やらない」と反発する。第二次反抗期は、思春期にあらわれる。
  3. ギャングエイジ
    • ギャングエイジは、学童期の特徴である。友人との関わりを求め、顔ぶれの決まった5〜6人の友人と結束の強い集団を作り、親や教師の干渉から逃れて活発に遊ぶようになる。これにより相互性や責任感、役割分担等の社会性を学んでいく。
  4. 自我同一性の確立
    • 自我同一性の確立は、青年期における発達課題である。自分の性格や、生い立ち、環境、能力、体験などを通して、自分らしさを見つけることである。

【問題9】 平成22年(2010年)国民生活基礎調査で、65歳以上の者のいる世帯の全世帯に占める割合はどれか。

正解 3

  1. 22.6%
  2. 32.6%
  3. 42.6%
    • 平成22年国民生活基礎調査によると、65歳以上の者のいる世帯は2070万5千世帯で、全世帯の42.6%となっている。
  4. 52.6%

【問題10】 健常な成人の体重における水分の割合に最も近いのはどれか。

正解 3

  1. 20%
  2. 40%
  3. 60%
    • 成人の水分の割合は、体重の約60%である。そのうちの3分の2は細胞内液、3分の1は細胞外液である。
  4. 80%

【問題11】 血中濃度が上昇すると黄疸となるのはどれか。

正解 2

  1. グルコース
    • 血中のグルコース(ブドウ糖)の濃度を血糖値といい、糖尿病や甲状腺疾患、胃切除後のダンピング症候群などで高値を示す。
  2. ビリルビン
    • 黄疸は、血中のビリルビンが増加し、皮膚、粘膜、その他の組織が黄染された状態である。肝内胆汁うっ滞性黄疸や閉塞性黄疸は、直接ビリルビンの増加によってみられる。溶血性黄疸や新生児黄疸、肝細胞性黄疸は、間接ビリルビンの増加によってみられる。
  3. クレアチニン
    • クレアチニンは、血中に存在する老廃物の一種で、本来は尿中に排出される。そのため、クレアチニンの血中濃度は腎機能の指標として用いられる。
  4. 総コレステロール
    • 血中に含まれるコレステロールの量で、脂質異常症の診断基準の一つである。

【問題12】 末梢血液中の□が低下した状態を貧血という。□に入るのはどれか。

正解 4

  1. 血漿量
  2. 血小板数
  3. アルブミン濃度
  4. ヘモグロビン濃度
    • 貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が正常の範囲以下に低下した状態である。

【問題13】 表在感覚の受容器が存在する部位はどれか。

正解 2

  1. 筋肉
  2. 皮膚
    • 表在感覚とは、触覚、痛覚、温度覚などの皮膚や粘膜の感覚である。筋肉や腱、関節などにある受容器から生じる感覚は、深部感覚という。
  3. 関節

【問題14】 Koplik(コプリック)斑がみられる疾患はどれか。

正解 1

コプリック斑とは、頬粘膜に出現する直径1mm程度の少し膨らんだ白色小斑点である。

  1. 麻疹
    • 感染初期のカタル期、発疹出現の1〜2日前にコプリック斑が出現する。
  2. 手足口病
    • 手足口病は、主に夏季に乳幼児を中心にみられる感染症で、口腔粘膜および四肢末端などに水疱性発疹がみられる。
  3. 帯状疱疹
    • 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、神経に沿って帯状に赤い発疹と水ぶくれが出現し、疼痛を伴う。
  4. ヘルパンギーナ
    • ヘルパンギーナは、主に夏季に乳幼児を中心にみられる感染症で、高熱や咽頭痛、口腔粘膜の水疱性発疹が主症状である。

【問題15】 嚥下障害のある患者の食事介助で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 水分はとろみをつける。
    • 嚥下障害時は水分にとろみをつけるようにする。
  2. 頸部を伸展する。
    • 頸部伸展は食道と気管が直線になり誤嚥しやすくなるので、頸部前屈にする。
  3. 一口量を多くする。
    • 誤嚥防止のために一口量は少なくする。
  4. むせたときには水を飲ませる。
    • 水で流し込むことは余計にむせる原因となり適切でない。むせたときは呼吸を整えるようにし、必要があれば異物を吸引・排出する。

【問題16】 グリセリン浣腸を実施する際、腸管穿孔の危険性が最も高い体位はどれか。

正解 1

グリセリン浣腸は、グリセリン液を40〜41℃に温め、肛門より6〜10cm挿入する。

  1. 立位
    • 立位での実施は直腸穿孔の危険性があるため、体位は左側臥位とする。
  2. 側臥位
  3. 仰臥位
  4. シムス位

【問題17】 長期臥床によって生じるのはどれか。

正解 2

  1. 高血糖
  2. 筋萎縮
    • 長期臥床によって筋萎縮や関節拘縮、骨萎縮(骨粗鬆症)、起立性低血圧、褥瘡などの廃用症候群が生じる。
  3. 食欲増進
  4. 心拍出量の増加

【問題18】 点滴静脈内注射1,800ml/日を行う。一般用輸液セット(20滴≒1ml)を使用した場合、1分間の滴下数はどれか。

正解 2

  1. 19滴
  2. 25滴
    • 20滴≒1mlであるので、1,800mlでは、1,800×20=36,000滴である。1日は1,440分なので、1分間の滴下数は、36,000÷1,440=25滴である。
  3. 50滴
  4. 75滴

【問題19】 温罨法の作用で正しいのはどれか。

正解 3

  1. 平滑筋が緊張する。
    • 温罨法は、平滑筋が弛緩する。
  2. 局所の血管が収縮する。
    • 温罨法は、局所の血管が拡張する。
  3. 知覚神経の興奮を鎮静する。
    • 温罨法は、知覚神経の興奮を鎮静する。
  4. 細胞の新陳代謝を抑制する。
    • 温罨法は、細胞の新陳代謝を促進する。

【問題20】 AEDの使用方法で正しいのはどれか。

正解 2

  1. 電極パッドは水で濡らしてから貼る。
    • 電極パッドは濡らさないようにする。 電気が体表の水を伝わり流れてしまい、AEDの効果が不十分になるため、胸部が濡れている際には水分を拭き取ってから装着する。
  2. 電極パッドは心臓をはさむ位置に貼る。
    • 電極パッドは右前胸部(右鎖骨下)及び左側胸部(左脇5〜8cm下)に貼る。
  3. 通電時は四肢を押さえる。
    • 感電しないよう通電時は患者に触れずに離れておく。
  4. 通電直後は患者に触れない。
    • 通電後は患者に触れてもよい。

【問題21】 災害時のトリアージで最優先治療群のトリアージタッグはどれか。

正解 1

トリアージとは、負傷者を重症度や緊急度などによって分類し、治療や搬送の優先順位を決めることである。

    • 最優先群である。生命に関わる重篤な状態で、救命の可能性があり、最優先で治療を行うべきものである。
    • 待機群である。ただちに生命が脅かされる状態ではないが、処置が必要なものである。
    • 死亡群である。死亡、または救命不可能と判断された場合である。
    • 保留群である。今すぐの処置や搬送の必要ないものである。

【問題22】 McBurney(マックバーネー)点の圧痛を特徴とする疾患はどれか。

正解 4

マックバーネー圧痛点は、臍と右上前腸骨棘とを結ぶ線上の臍から3分の2にある点である。

  1. 胃潰瘍
    • 胃潰瘍の診断には、ボアス圧痛点(第10胸椎〜第12胸椎棘突起左側)などが用いられる。
  2. 急性膵炎
    • 急性膵炎では、上腹部の腹痛、圧痛がみられる。
  3. 尿管結石症
    • 尿管結石症では、腰背部痛や側腹部痛、下腹部痛がみられる。
  4. 急性虫垂炎
    • 虫垂炎の診断には、マックバーネー圧痛点の他、ランツ圧痛点(左上前腸骨棘と右上前腸骨棘を結ぶ線上の右3分の1にある点)やキュンメル圧痛点(臍の右下1〜2cmの点)などが用いられる。
  5. 子宮内膜症
    • 子宮内膜症では、下腹部の疼痛や子宮の圧痛がみられる。

【問題23】 神経性食欲不振症の症状または所見はどれか。

正解 3

  1. 発熱
  2. 咳嗽
  3. 徐脈
    • 神経性食欲不振症は思春期の女性に多くみられる。器質的な疾患はなく、著しいるいそう、無月経、低血圧、低体温、徐脈などが生じる。
  4. 高血圧
  5. 過多月経

【問題24】 長期間の使用によって満月様顔貌(ムーンフェイス)になるのはどれか。

正解 4

  1. ヘパリン
    • ヘパリンは抗凝固薬であり、ヘパリン起因性血小板減少症、血栓症、骨多孔症などの副作用がある。
  2. インスリン
    • インスリンは、血糖値を低下させる作用があり、糖尿病の治療に用いられる。重大な副作用として、低血糖やアナフィラキシーショック、血管神経性浮腫などが生じることがある。
  3. テオフィリン
    • テオフィリンには、気管支拡張作用や抗炎症作用があり、気管支喘息発作や気管支炎の治療に用いられる。悪心、嘔吐、頭痛、動悸、興奮などの他、不整脈や痙攣が起こることがある。
  4. プレドニゾロン
    • プレドニゾロンは、ステロイド系抗炎症薬であり、慢性副腎不全、膠原病、ネフローゼ、関節リウマチ、喘息、アレルギー症状などに用いる。長期間の使用によって満月様顔貌が生じることがあり、その他に感染症の誘発や胃・十二指腸潰瘍、精神障害、白内障、緑内障、糖尿病、骨粗鬆症などの副作用がある。
  5. インドメタシン
    • インドメタシンには、鎮痛、解熱、抗炎症作用がある。長期間の使用によって胃腸出血や消化性潰瘍などが生じることがある。

【問題25】 努責やくしゃみをしたときに生じる尿失禁はどれか。

正解 5

  1. 溢流性尿失禁
    • 溢流性尿失禁は、慢性尿閉によって尿が膀胱に溜まり、膀胱内圧が上昇して尿が漏れ出してしまうものである。前立腺肥大症や神経因性膀胱などが原因となる。
  2. 機能性尿失禁
    • 機能性尿失禁は、運動機能低下や認知症などによりトイレに間に合わなかったり、排尿すべき場所を認識できずに生じる尿失禁である。
  3. 切迫性尿失禁
    • 切迫性尿失禁は、膀胱が過敏な状態で、強い尿意が急に起こり、我慢できずに尿が漏れてしまうものである。脳卒中や脊髄炎などの中枢神経疾患、膀胱炎や前立腺肥大症などの泌尿器系疾患が原因となる。
  4. 反射性尿失禁
    • 反射性尿失禁は、脊髄損傷などの中枢神経疾患によって、膀胱に尿が溜まっても、尿意を感じたり排尿をコントロールできずに、尿失禁が生じるものである。
  5. 腹圧性尿失禁
    • 腹圧性尿失禁は、骨盤底筋や尿道括約筋の低下により、努責やくしゃみなどの腹圧に耐えられずに尿失禁が生じるものである。

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