第101回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午後問題106〜120)

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aちゃん(2歳10か月)は、両親と生後3か月の妹と4人で暮らしている。Aちゃんは、6日前に発熱および不定形の発疹が腹部と背部とに出現した。解熱薬の使用によって、体温は一時的に低下したが、再び上昇したので受診した。受診時、口唇の充血と乾燥とが著明で、眼球結膜の充血と四肢の硬性浮腫とがみられた。受診時の血液検査の結果は、CRP15.7mg/dl、AST(GOT)22IU/l、ALT(GPT)54IU/lであった。Aちゃんは川崎病と診断され、入院した。アスピリンの内服とγ-グロブリンの点滴静脈内注射とが開始された。

【問題106】 入院時のAちゃんへの看護で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 歩行を禁止する。
  2. 高エネルギー食とする。
  3. 弾性包帯で下肢を圧迫する。
  4. アナフィラキシー様症状に注意する。
    • γ-グロブリンの副作用であるアナフィラキシー様症状に注意する必要がある。

【問題107】 Aちゃんは妹の誕生後、母親からなかなか離れないことが多くなっていたという。最近は、妹のおもちゃを取り上げ、注意されるとすねて返さないことがあった。Aちゃんは排尿は自立していたが、入院後は失敗することが多くなった。Aちゃんのアセスメントで適切なのはどれか。

正解 1

  1. 退行現象がみられる。
    • 妹のおもちゃを取り上げたり、排尿を失敗することが多くなったことから、妹が生まれたことで退行現象が出現していると考えられる。
  2. 自我同一性が確立している。
  3. アタッチメントの形成が不良である。
  4. 感情をコントロールする能力の発達が遅れている。

【問題108】 心エコー検査で冠状動脈瘤が発見されたが、Aちゃんは元気にしており、退院することになった。Aちゃんの家族への退院指導で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 走らせない。
  2. 塩分摂取を制限する。
  3. 激しく泣かせない。
  4. 予防接種は退院後6か月以降に行う。
    • γ-グロブリンの投与を受けているため、予防接種は6か月以上間隔を空けて行う。

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初産婦)は、正常な妊娠経過で妊娠39週5日に3,100gの児を分娩した。分娩所要時間16時間30分、出血量は300ml。会陰切開・縫合術を受けた。

【問題109】 産褥1日。Aさんは、体温36.8 ℃、脈拍78/分、血圧116/70mmHgである。排尿後の観察では、子宮底の位置は臍下1横指、子宮は硬く触れ、血性悪露が中等量みられる。会陰縫合部に発赤はないが、痛みがあるため円座を使用している。Aさんは「トイレに行きたい感じがはっきりしません」と言う。観察すると膀胱充満はみられなかった。Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

正解 3

  1. 「導尿しましょう」
  2. 「お水をたくさん飲みましょう」
  3. 「3、4時間ごとにトイレに行きましょう」
    • 尿意がはっきりしないと訴えているので、適度に水分摂取を行い、定期的に排尿するようにする。
  4. 「縫合部の痛みがなくなれば感覚が戻ってくるでしょう」

【問題110】 産褥2日。Aさんは、体温37.0℃、脈拍84/分、血圧120/70mmHgである。子宮底の位置は臍下2横指、子宮は硬く触れ、血性悪露が少量みられる。乳房に熱感と緊満感とがある。授乳は1、2時間ごとに行っている。会陰縫合部に変化はないが、Aさんは「痛みがあるので座って授乳するのがつらい」と言う。この日の血液検査の結果は、Hb12.0g/dl、Ht38%であった。Aさんのアセスメントで最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 貧血がある。
    • Hb12.0g/dlであり、貧血はない。
  2. 感染徴候がある。
    • 体温は37.0℃であり、感染徴候はない。
  3. 乳汁うっ滞がみられる。
    • 乳房局所の発赤や腫脹、疼痛、圧痛はなく、乳房の熱感と緊満感は生理的なものである。
  4. 授乳時の体位を工夫する必要がある。
    • 「痛みがあるので座って授乳するのがつらい」と訴えており、痛みが軽減できるよう、授乳時の体位を工夫する。

【問題111】 生後3日。Aさんの児は母乳のみを哺乳している。体重2,850g。体温37.3℃、心拍数156/分、呼吸数50/分で周期性呼吸がみられる。児の全身観察では乳房の軽度腫脹がみられる。児の昨日の哺乳回数は12回であった。排便は2回で移行便であり、排尿は4回であった。児の観察結果で正常を逸脱している所見はどれか。

正解 1

  1. 排尿回数
    • 生後3日の成熟児で、哺乳回数が12回であれば、通常10回程度の排尿がみられる。排尿回数が4回は少なすぎるため、正常を逸脱していると言える。原因としては、哺乳量の不足が考えられる。
  2. 体重減少率
    • 250gの体重減少は、生理的体重減少の範囲内である。
  3. 乳房の腫脹
    • 新生児では、母体の女性ホルモンの影響で乳房の腫脹がみられることがある。異常所見ではない。
  4. 周期性呼吸
    • 周期性呼吸は、新生児期にしばしばみられ、異常所見ではない。

次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、経産婦)は、妊娠中に妊娠糖尿病と診断され、食事療法を行っていた。Aさんは、妊娠39週3日に3,500gの児を自然分娩した。分娩の所要時間は2時間45分、出血量は450ml、第1度会陰裂傷のため縫合術を受けた。児のApgar(アプガー)スコアは1分後8点、5分後9点であった。

【問題112】 生後1時間。Aさんの児は、体温36.8℃、心拍数150/分、呼吸数56/分である。呼吸は不規則であるが陥没呼吸や呻吟はみられない。四肢に軽度のチアノーゼがみられる。児への対応で最も優先すべきなのはどれか。

正解 2

  1. 沐浴
  2. 血糖値の測定
    • 妊娠糖尿病の母親から生まれた児は低血糖になりやすいため、血糖値の測定が最も優先される。
  3. 口腔内の吸引
  4. 保育器への収容

【問題113】 分娩後6時間。Aさんは、体温37.2℃、脈拍64/分、血圧126/68mmHgである。子宮底の位置は臍高、子宮はやや軟らかく触れ、血性悪露が中等量みられる。下腹部痛はないが会陰縫合部の痛みが軽度ある。乳房に緊満はなく、乳腺開口は2、3本である。このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

正解 3

  1. 床上安静を勧める。
    • 早期離床や産褥体操を勧める。産褥体操は、産褥1日目から行える。
  2. 下腹部に温罨法を行う。
    • 子宮収縮を促すために、下腹部に冷罨法を行う。
  3. 子宮底の輪状マッサージを行う。
    • 分娩後6時間で子宮底の位置は臍高、子宮はやや軟らかく触れるので、子宮底の輪状マッサージを行い、子宮収縮を促す。
  4. 乳房の自己マッサージを指導する。
    • 子宮収縮を促す援助が優先である。

【問題114】 産褥4日。Aさんの血糖は、食前80mg/dlで、食後2時間には110mg/dlであった。児には2時間ごとに母乳を与えており、退院後も母乳育児を希望している。看護師はAさんから「これからはどのように血糖コントロールをしていくことになりますか」と質問された。Aさんへの説明で適切なのはどれか。

正解 3

  1. 自己血糖測定を生涯継続していく必要がある。
    • 妊娠糖尿病であるので、自己血糖測定を生涯継続していく必要はない。ただし、妊娠糖尿病の既往歴がある場合は、糖尿病発症のリスクが高いため、定期的な血糖測定や検診が必要である。
  2. インスリンによる血糖コントロールが必要になる。
    • 空腹時血糖値、食後2時間血糖値ともに正常である。出産後は、インスリンによる血糖コントロールは必要ない。
  3. 産後6週ころにブドウ糖負荷試験を受ける必要がある。
    • 産後6〜12週後にブドウ糖負荷試験を受け、病型の分類を行う。
  4. 必要エネルギー量は非妊時と同等である。
    • 授乳婦のエネルギー付加量は、350kcal/日である。

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
 Aさん(29歳、女性)は、20歳で短期大学を卒業するのと同時に就職したが「会社に行きたくない」と言い出して、2か月で仕事を辞めた。その後は、自宅で何もせずに過ごしていた。昼夜逆転の生活が長く続いたが、ある日、夜遅く帰宅した父親と就職のことで激しい口論となった。それ以来、昼も夜も起きていて、食事も摂らずに自室に引きこもり、ぶつぶつと独り言を言ったり、笑ったりするようになった。心配した母親に伴われて受診し、統合失調症と診断された。

【問題115】 Aさんの表情は険しく、常に周囲を警戒している。医師が入院を勧めたが、Aさんは興奮し、母親にしがみつきながら「入院はいや。家に連れて帰って」と泣き叫んだ。さらに、診察室のドアの方に走って逃げようとしたため、看護師が制止しようとすると、Aさんはその看護師を突き飛ばした。この看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 2,4

  1. 大きな声で話しかける。
  2. 入院を拒否する理由を尋ねる。
    • 訴えをよく聞き、患者の気持ちを確認する。刺激して興奮状態を強めないよう、感情的な態度で接しないようにする。
  3. 母親に入院の説得を依頼する。
  4. 看護師と患者の身体の損傷に注意する。
    • 患者は興奮状態で、看護師を突き飛ばしている。今後も危険な行動をとる可能性があり、看護師と患者の身体の損傷に注意し、安全を図ることが大切である。
  5. 患者と2人きりで話すことができる場所に移動する。

【問題116】 入院後1か月が経過し、Aさんは看護師に時々笑顔を見せるようになってきた。Aさんは「毎日が退屈」、「早く退院したい」と言うようになった。Aさんを交えたカンファレンスで、病棟で週1回行われている退院支援グループへの参加を検討した。このグループでは、対人関係や社会生活を営むのに必要なスキルの学習が行われている。Aさんのグループ参加の目的として、最も優先度が高いのはどれか。

正解 3

  1. 生活リズムを整える。
  2. 興奮が抑えられるようになる。
  3. 退院後の日中の過ごし方を考える。
    • 退院後の生活を見据えて、対人関係や社会生活に必要なスキルを学習しながら、退院後の生活イメージを具体化していく。
  4. 他の参加者から問題点の指摘を受ける。

【問題117】 退院支援グループに参加し始めてから1か月が経過し、Aさんはグループの他の参加メンバーとも打ち解けて話をするようになった。5回目の参加で、Aさんは「父親は、私の苦しさを分かってくれない。退院しても、また言い争いになりそう」と話した。グループに参加しているAさんの担当看護師の対応で、適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 4,5

  1. Aさんの気持ちを積極的に代弁する。
  2. 終了後、Aさんに反省点を報告してもらう。
  3. Aさんの話がテーマとずれないよう介入する。
  4. Aさんに父親とのやり取りのロールプレイを提案する。
    • ロールプレイによって、自分自身を知り、父親の気持ちを考えることで、相互理解を深めることができる。
  5. Aさんが自分の悩みを表現したことは意義があると話す。
    • 自身の気持ちを表出したことを肯定的に評価することが適切である。

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。
 Aさん(52歳、男性)は、妻と会社員の娘と3人で暮らしている。Aさんは2年前に職場を解雇され、再就職先を探している。以前から飲酒する機会は多かったが、解雇後は朝から酒を飲み続け、妻が止めるように言っても聞き入れなかった。Aさんは、3か月前に自宅近くの診療所でアルコール性肝硬変と診断され、断酒を勧められたが実行できずにいた。Aさんは、妻に伴われて専門医療機関を受診し、アルコール依存症と診断された。

【問題118】 Aさんは、自分がアルコール依存症であることを認めず「酒を減らせば問題ない」と言って説明を聞こうとしない。家族への看護師の対応で適切なのはどれか。

正解 3

  1. Aさんの就職活動に家族が協力するように提案する。
  2. Aさんの飲酒量を家族が記録しておくように指示する。
  3. どのような対応がAさんの治療意欲を阻害するかについて説明する。
    • 患者のためを思っての家族の言動が、結果的にマイナスに作用してしまうこともある。家族が病気を正しく理解できるよう支援することが適切である。
  4. Aさんが治療を拒否している間は、家族にできることはないと伝える。

【問題119】 Aさんは黄疸がみられるようになったことをきっかけに、アルコール依存症の治療を受けることになった。妻は、これまで1日中酒ばかり飲んでいたAさんに対する強い不満を看護師に話した。看護師から妻への助言で最も適切なのはどれか。

正解 4

  1. 家にある酒類はすべて捨てるように話す。
  2. Aさんの代わりに家計を支えるように話す。
  3. Aさんに飲酒の害を再度伝えることを提案する。
  4. 家族のためのセルフヘルプグループへの参加を勧める。
    • セルフヘルプグループへ参加することで、自身の体験や抱えている悩みを他者と話し合い、共有することができる。

【問題120】 ある受診日に、Aさんは「3か月お酒を飲まないでいましたが、昨日また飲んでしまいました」と話した。看護師は、それまで断酒を続けたAさんの努力を認めた。次に、看護師がAさんに話す内容で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 「意志を強く持たないといけません」
  2. 「昨日はなぜ飲みたくなったのですか」
    • 飲酒をしたことを責めたり、肯定するような発言はしない。断酒を続けた努力を認めた上で、患者の気持ちを傾聴することが大切である。
  3. 「3か月頑張ったから、少しくらいは大丈夫です」
  4. 「家族の信頼を失うようなことをするのは止めましょう」

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