第100回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題91〜105)

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 Aさん(70歳、男性)は、65歳の妻と2人で暮らしている。Aさんは67歳のときに安静時に振戦が現れ、パーキンソン病と診断された。ヤールの重症度分類ステージIIIで、要介護3である。Aさんの症状として、仮面様顔貌、小刻み歩行および前傾姿勢がある。歩行練習を行っており、排泄は時間はかかるが自分でできている。Aさんの長男夫婦は車で1時間のところに住んでおり、週末に様子を見にきている。Aさんは訪問看護を2週間に1回利用している。

【問題91】 転倒を予防するために、Aさんと妻に対して行う訪問看護師の指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 3,5

  1. なるべく家の中で過ごす。
    • ADLの低下につながる恐れがある。
  2. 方向転換はすばやく行う。
    • パーキンソン病では、方向転換時に足がすくむことがあるので、すばやく行おうとすると転倒する恐れがある。
  3. 夜間はポータブルトイレを利用する。
    • 排泄は自力で行うことができるので、夜間はポータブルトイレを利用することで転倒を予防できる。
  4. 動きが遅いときには歩行練習を増やす。
    • 動作が遅いのはパーキンソン病の症状である。歩行練習を増やしても転倒予防にはつながりにくい。
  5. 歩行を開始する時は、妻がかけ声をかける。
    • 歩行開始時に声をかけることで、バランスが崩れるのを防ぐことができる。

【問題92】 Aさんは、ドパミン受容体刺激薬とレボドパを内服している。妻から「まったく動けない時もあれば、目を離している間に動いて、転んでいることもある」と訴えがあった。Aさんへの対応に関する妻への訪問看護師の指導で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 「内服と症状との関連を観察しましょう」
    • 無動や姿勢反射障害による転倒というパーキンソン病の症状がでているので、きちんと服薬できているか、薬が効いているか(ウェアリング・オフ現象が出現していないか)を確認する。
  2. 「副作用が出ているので、お薬を止めましょう」
    • 副作用が出ているという記述はないので、服薬を中止する必要はない。
  3. 「お薬が効いてきたら、好きなようにさせてあげましょう」
    • 薬が効いてきても、介助は必要である。
  4. 「転倒の危険があるので、目を離さないようにしましょう」
    • 妻の負担も考えて発言するべきである。

【問題93】 妻は「今後もできる限り自宅で介護したいが、病状が進行してどんどん動けなくなってきて不安です。機能訓練すれば動けるようになるかしら」と話した。妻の不安を緩和するための訪問看護師の行動で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 長男夫婦に平日の機能訓練を依頼する。
    • 長男夫婦は車で1時間のところに住んでおり、週末に様子を見にきている。平日の機能訓練を依頼することは現実的ではない。
  2. サービス担当者会議の開催を提案する。
    • サービス担当者会議を開催し、サービスの導入など、今後の方向性について話し合う。
  3. もう少しがんばって介護するように妻を励ます。
    • 訪問看護は2週間に1回で、長男夫婦が様子を見にくるのは週末のみである。十分頑張っている妻に対して不適切な発言である。
  4. 訪問リハビリテーションの適応ではないと話す。
    • 訪問リハビリテーションの適応であり、サービス担当者会議において導入の検討をする。

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、76歳の妻と娘の3人で暮らしている。Aさんは、大腸癌と診断され、手術を受けてストーマを造設した。その後、再発し、治療を行ったが効果がなく、在宅で緩和ケアを行うことになった。Aさんは腹部の癌性疼痛を訴え、オキシコドン塩酸塩徐放錠を1日2回内服している。Aさんは食べたいときに食べたいものを少量ずつ食べているが、摂取量が減少してきている。妻は腰痛があり、娘は日中、仕事に出ている。

【問題94】 Aさんは退院後、訪問看護を利用することになった。病棟看護師による家族への退院指導の内容で最も適切なのはどれか。

正解 1

  1. 食事摂取量を継続的に観察する。
    • 食事摂取量が減少してきているので、継続的に観察する必要がある。
  2. ストーマを造ったので便秘の心配はない。
    • ストーマを造っても便秘は起こりえる。
  3. ストーマ用品は訪問看護ステーションから買う。
    • 訪問看護ステーションでストーマ用品は販売していない。
  4. 痛みが増強したときは次回の外来受診時に伝える。
    • 痛みが増強した時点で伝える。

【問題95】 退院後、Aさんは痛みが強くなってきた。外来でオキシコドン塩酸塩徐放錠が増量されていた。その後、全身状態が悪化し傾眠傾向がみられるようになった。そのため、確実に疼痛がコントロールできるよう、フェンタニル貼付剤に切り替えることになった。AさんのADLは低下しており、介護している妻は腰痛の増強を訴え始めている。訪問看護師による家族への指導で適切なのはどれか。

正解 3

  1. フェンタニル貼付剤は痛みのある部位に貼る。
    • フェンタニル貼付剤は経皮的に吸収され、全身に作用するので、痛みのある部位に貼る必要はない。
  2. フェンタニル貼付剤は痛みが出始めたら交換する。
    • フェンタニル貼付剤は72時間ごとに貼り替える。
  3. 残ったオキシコドン塩酸塩徐放錠は医療機関に返却する。
    • オキシコドン塩酸塩徐放錠は麻薬である。不要になった場合は、医療機関に返却する。
  4. 妻の腰痛の緩和のためにフェンタニル貼付剤を使用してもよい。
    • 処方された本人以外は使用しない。

【問題96】 Aさんの傾眠傾向が強まり、時々無呼吸がみられるようになった。食事や水分の摂取量は少ないが、疼痛を訴えることはない。妻は「できればこのまま自宅でみていきたい」と話している。自宅で看取るための体制として必要なのはどれか。

正解 2

  1. 見舞い客の制限
    • 見舞い客を制限するかどうかは、本人の意向を尊重しつつ、家族が決定すればよい。
  2. 訪問診療の導入
    • 通院は負担が大きいため、訪問診療の導入が必要となる。
  3. 娘の介護休暇の取得
    • 妻の介護負担が増加するようならば必要であるが、現時点で休暇の取得を急ぐ必要はない。
  4. 高カロリー輸液の開始
    • 食事や水分の摂取量は少ないが、高カロリー輸液は必要ない。
  5. 家族による24時間の観察
    • 家族の負担を考えると適切でない。

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 Aさん(65歳、男性)は、右下葉の肺癌(T3N2M0)と診断され、抗癌化学療法(シスプラチン+エトポシド)1クール4日間を4クール行うことになった。入院時のAさんは、体温36.2℃、呼吸数18/分、脈拍72/分、血圧124/74mmHgであった。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は98%で、咳嗽が時々みられるが、痰の喀出はなく、胸部の聴診にて副雑音はない。Aさんの血液検査の結果は、白血球5,600/μl、アルブミン3.7g/dl、CRP0.3mg/dlであった。Aさんは20歳のころから毎日20本の煙草を吸っていたが、60歳のときに禁煙した。

【問題97】 Aさんの入院時の状態で正しいのはどれか。

正解 4

  1. 喫煙指数(ブリンクマン指数)は60である。
    • 喫煙指数は、1日の喫煙本数×喫煙年数で求める。Aさんの場合、20本×40年=800である。
  2. 肺炎の徴候がみられる。
    • 呼吸数、SpO2は正常値で、痰の喀出はなく、副雑音もない。肺炎の徴候はみられない。
  3. 低栄養の可能性がある。
    • アルブミンは3.7g/dlで、正常値に近く、低栄養であるとはいえない。
  4. リンパ節転移がある。
    • 癌の進行度や転移については、TNM分類が用いられる。N2であるので、リンパ節転移がある。
      T(tumor):腫瘍
      T0(腫瘍なし)、T1〜T4(癌の大きさと浸潤の程度により、各臓器別に分類)
      N(lymph nodes):リンパ節転移
      N0(リンパ節転移なし)、N1〜N4(リンパ節転移の程度により、各臓器別に分類)
      M(metastasis):遠隔転移
      M0(遠隔転移なし)、M1(遠隔転移あり)

【問題98】 抗癌化学療法が開始されて2日が経過した。Aさんは悪心・嘔吐・下痢が出現し、食事はほとんど摂れていない。Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 吐き気があるのは薬が効いている証拠だと話す。
    • 効いている証拠ではなく、抗癌化学療法の副作用である。
  2. 無理して食べなくてもよいと話す。
    • 食事は摂れるときに摂るようにし、無理はさせない。
  3. 嘔吐後の口腔ケアは控える。
    • 化学療法によって免疫力が低下しているので、口腔ケアを行い、口腔内を清潔に保つ必要がある。
  4. 経管栄養を検討する。
    • 経管栄養の適応は嘔吐や下痢がない場合である。

【問題99】 抗癌化学療法が開始されて5日が経過した。Aさんの血液検査の結果は、白血球2,100/μl(好中球50%)である。看護師が行うAさんへの感染予防の対策で適切なのはどれか。

正解 2

  1. 加熱食に変更する。
    • 加熱食はクリーンルームに入っている場合に必要となる。
  2. マスクの着用を促す。
    • 白血球数が減少しているので、感染予防のためにマスクを着用する。
  3. 面会者の入室を禁止する。
    • 面会謝絶にする必要はない。
  4. クリーンルームに入室とする。
    • 白血球2,100/μl(好中球50%)であるので、クリーンルーム入室の必要はない。一般的に、好中球数500/μl以下がクリーンルーム入室の目安となる。

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 Aさん(28歳、女性)は、サーフィンが趣味で休日は海岸にいることが多い。Aさんは数ヶ月前から前胸部や腕に皮疹がみられ、日焼け後の疲労も強くなり、先月からサーフィンに行くことができなくなっていた。また数週間前から関節痛、微熱、倦怠感があり、2日前から39℃台の発熱が続いたため受診した。血液検査等の結果、全身性エリテマトーデス(SLE)を疑われ、緊急入院になった。

【問題100】 Aさんは顔面が赤くなっていることに驚き、「頬のあざのようなものは消えるのでしょうか」と医師に尋ねた。医師は「治療の効果が出てくれば消えます」と説明した。Aさんは顔面の発赤で最も考えられるのはどれか。

正解 2

  1. ばら疹
    • 梅毒の症状として、ばら疹と呼ばれる全身性の淡紅色斑が生じる。
  2. 蝶形紅斑
    • 全身性エリテマトーデスは膠原病の一種で、20〜30代の若い女性に多くみられる。発熱や倦怠感、体重減少、蝶形紅斑などが主症状である。
  3. 結節性紅斑
    • 結節性紅斑は、皮下脂肪細胞の炎症である。主に下腿に円形ないし不規則形の紅斑が生じ、しこりや圧痛を伴う。
  4. 伝染性紅斑
    • 伝染性紅斑(リンゴ病)は、ヒトパルボウイルスB19による感染症で、両頬に出現する紅斑が特徴である。

【問題101】 入院した翌朝、Aさんの倦怠感はさらに強まり、顔面の浮腫が増強し、尿蛋白3+が認められた。Aさんが両膝と足関節の痛みや、歩行時の息切れがすると訴えたので、排尿はベッドサイドで行い、それ以外は安静にするように指示された。血液検査の結果は白血球3,000/μl、血小板11万/μl、溶血性貧血が認められ、酸素投与が1l/分で開始された。Aさんの診断に必要と考えられる検査はどれか。

正解 2

  1. 膀胱鏡
  2. 腎生検
    • 全身性エリテマトーデスの多くはループス腎炎を合併する。倦怠感、浮腫、蛋白尿はループス腎炎の症状であるので、診断のため腎生検が必要である。
  3. 関節鏡
  4. 骨髄穿刺

【問題102】 Aさんの病状が進行したため、メチルプレドニゾロンによるパルス療法が開始された。Aさんのパルス療法による副作用への看護師の対応で適切なのはどれか。

正解 1

  1. 病室の外でのマスク着用を勧める。
    • ステロイドを短期間に大量に投与する治療法をステロイドパルス療法といい、ステロイド剤にはメチルプレドニゾロンが使用されることが多い。ステロイド剤の大量投与の副作用として易感染性があるため、マスクの着用などを行い感染を予防する。
  2. 水分摂取は800ml/日にする。
    • 水分制限をする必要はない。
  3. かつらの販売業者を紹介する。
    • ステロイドパルス療法による副作用で、かつらが必要になるほどの脱毛は通常起こらない。
  4. 口すぼめ呼吸法を勧める。
    • 口すぼめ呼吸法は慢性閉塞性肺疾患などで行う。

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、女性)は右乳癌と診断され、手術を受けるために入院した。Aさんは夫を3年前に腎臓癌で亡くしたが、貸しビル業を引き継いでおり、経済的な問題はない。趣味はテニスである。

【問題103】 Aさんに右乳房温存腫瘍摘出術と腋窩リンパ節郭清が行われ、腋窩部にドレーンが挿入された。Aさんは、病室に戻ったころより患者上肢のだるさを訴えている。ドレーンを挿入したAさんへの対応で適切なのはどれか。

正解 4

  1. ドレーンは水封式吸引装置に接続する。
    • 浸出液やリンパ液などを体外に排出するため、術後にドレーンを留置する。通常、低圧持続吸引器を使用する。
  2. 積極的な上肢回旋運動でドレーンからの排液を促す。
    • リハビリテーションは必要であるが、すぐに激しい運動はせず、段階的に行っていく。手術直後であるので、ボール握りなどから始める。
  3. ドレーン抜去時まで刺入部のガーゼ交換は行わない。
    • ガーゼには血液や浸出液がみられるので、適宜ガーゼ交換を行い、浸出液の状況を観察する。
  4. ドレーンを抜去した翌日から全身のシャワー浴は可能である。
    • ドレーン抜去翌日からシャワー浴は可能である。

【問題104】 Aさんの術後の経過は良好で、外来で抗癌化学療法を受ける予定で退院した。Aさんは患側上肢のだるさ、疲れやすさが残ると外来看護師に話した。Aさんの患側上肢の浮腫を予防する方法で適切なのはどれか。

正解 4

  1. 使い捨てカイロを患側の腋窩にあてる。
    • 炎症はリンパ浮腫の原因となるため、皮膚の保護は大切である。低温やけどの危険性があるため、使い捨てカイロは患部にあてないようにする。
  2. 患側上肢はなるべく動かさないようにする。
    • 患側上肢を適度に動かして筋ポンプ作用を向上させ、リンパ還流を促進させる必要がある。
  3. 患側上肢のマッサージを中枢から末梢へ行う。
    • リンパマッサージは末梢から中枢へ行う。
  4. 患側上肢の静脈では抗癌薬の静脈内注射を行わない。
    • 感染や刺激につながる可能性があるので、注射や血圧測定などは患側上肢では行わない。

【問題105】 抗癌化学療法が終了し、1年半が経過した。Aさんは肋骨と脳に転移が疑われ、精密検査の目的で再び入院した。Aさんは「もうテニスはできないでしょうね。何を楽しみにすればいいのでしょう。早く夫のそばにいきたいです」と涙を流した。Aさんが現在感じている苦痛に最もあてはまるのはどれか。

正解 2

  1. 貸しビル業を続けることの苦痛
  2. 生きる目的を問うスピリチュアルな苦痛
    • 生き甲斐や生きる目的の喪失を感じており、スピリチュアルな苦痛にあてはまる。
  3. 手術や化学療法を受けたことによる身体的な苦痛
  4. 社会的な役割が果たせないことによる社会的な苦痛

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