第98回国家試験必修問題解説
午前
【問題1】 平成20年における我が国の合計特殊出生率に最も近いのはどれか。
正解 2
合計特殊出生率とは、一人の女性が一生に産む子供の数を示すものである。
- 0.9
- 1.3
- 平成20年(2008年)の我が国の合計特殊出生率は1.37である。尚、平成18年(2006年)は1.32、平成19年(2007年)は1.34であり、ここ数年は上昇している。
- 1.7
- 2.1
正解 3
粉塵や微粒子を長期間吸引することにより、じん肺が起こる。
- 皮膚炎
- 理・美容師などの職業病であるが、アスベストとは関係がない。
- 腰痛症
- 事務職などの職業病であるが、アスベストとは関係がない。
- 中皮腫
- じん肺の一種である石綿肺は、アスベストの吸入が原因である。肺癌や悪性中皮腫を合併する。
- 胃潰瘍
- 職場での精神的ストレスから起こる職業病であるとも言われているが、アスベストとは関係がない。
正解 4
社会福祉において、最も重要な基本理念である。
- アドボカシー
- 権利の代弁、権利の擁護のことを指す。自己の権利を行使したり表明することのできない終末期の患者や障害者、認知症患者などの権利を代弁することをいう。
- パターナリズム
- 医療現場において見られるパターナリズム(父権主義)とは、患者の最善の利益の決定の権利と責任は医師側にあり、医師は自己の専門的判断を行なうべきで、患者はすべて医師に委ねればよい、という考え方であり、医師と患者間の支配関係を指す言葉である。
- ヘルスプロモーション
- WHO(世界保健機関)が1986年のオタワ憲章において提唱したもので、人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセスをいう。
- ノーマライゼーション
- 「障害者や高齢者を特別視せず、可能な限り通常の市民生活を送ることができるようにする」という理念やそれに基づく政策をノーマライゼーションという。
【問題4】 QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を評価する上で最も重要なのはどれか。
正解 2
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)は、患者の生命と生活の質のことであり、患者中心の医療の基礎となる概念である。
- 家族の意向
- 患者の治療に家族の意向は大きく関わるが、患者本人の意思を超えることはない。
- 本人の満足感
- 治療等が患者の生活にとって意味のあることなのかを考える必要があり、患者自身の満足度が最も重要である。
- 生存期間の延長
- QOLは、単に命をながらえるよりも、どうすれば快適な生活を送ることができるか、ということを重視する。
- 在院日数の短縮
- 早期に在宅ケアに移行することも、本人が望むのであれば重要である。
【問題5】 入院中の乳児のバイタルサインで最初に測定するのはどれか。
正解 2
バイタルサインとは、人間の生命の基本的な徴候のことで、脈拍、呼吸、体温、血圧の4つを指す。
- 体温
- 成人の基準値は腋窩温で36〜37℃、乳児は36〜37.5℃である。
- 呼吸
- 泣くと正確な測定が出来なくなるため、身体に触れなくても測定できる呼吸から行う。成人の基準値は16〜20回/分、乳児は30〜40回/分である。
- 脈拍
- 成人の基準値は60〜80回/分、乳児は110〜130回/分である。
- 血圧
- 成人の基準値は100〜130mmHg(収縮期)、60〜85mmHg(拡張期)、乳児は80〜90mmHg(収縮期)、60mmHg(拡張期)である。
正解 3
膵臓にはホルモンを分泌する内分泌部(ランゲルハンス島)と、膵液を十二指腸に分泌する外分泌部がある。
- 前立腺
- 前立腺は、前立腺液を分泌する。
- 子宮
- 子宮は卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)によって、月経や排卵の周期などをコントロールしている。
- 膵臓
- ランゲルハンス島からはA細胞よりグルカゴン、B細胞よりインスリンが血中に分泌される。
- 肝臓
- 肝臓の主な機能は、栄養素の代謝、解毒作用、胆汁の分泌である。
正解 2
脳死とは、脳幹を含めた脳すべての機能が不可逆的に停止した状態をいう。
- 深昏睡
- 心停止
- 脳死の判定基準は、深昏睡、瞳孔散大、脳幹反射の消失、平坦脳派、自発呼吸の消失であり、心停止は含まれない。
- 瞳孔散大
- 自発呼吸の消失
正解 4
胆汁は肝臓で生成され、肝管を経て総肝管に入り、十二指腸に流入する。
- 白
- 黒
- 赤
- 緑
- 黄褐色の胆汁が、十二指腸内のアルカリ環境下によって緑色調となる。よって十二指腸から逆流した場合、緑色の吐物が混ざり、これを胆汁性嘔吐という。
正解 2
各波形の特徴を掴んでおく必要がある。
- 洞性徐脈である。
- 心室細動。最も重大な致死性不整脈であり、心停止に移行しやすい。
- 正常な波形である。
- 心室性期外収縮である。
正解 3
ニトログリセリンは狭心症治療薬として用いられる。
- 昇圧
- 昇圧作用があるのはカテコールアミンで、アドレナリン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどがある。
- 造血
- 造血薬には、鉄欠乏性貧血に用いられる鉄剤や、悪性貧血に用いられる葉酸、ビタミンB12製剤などがある。
- 血管拡張
- ニトログリセリンは血管拡張作用があり、狭心症発作時には舌下投与する。
- 免疫抑制
- 免疫抑制作用を持つ代表的な薬物は副腎皮質ステロイド、自己免疫性溶血性貧血では第一選択薬として用いられる。
正解 1
緑内障は、眼圧の上昇により視神経が障害され、視野が狭くなったり部分的に欠ける。
- アトロピン
- アトロピンやミドリンPなどの散瞳薬は、眼圧を上昇させるため禁忌である。
- インスリン
- インスリン療法の絶対的適応は、インスリン依存状態、糖尿病性昏睡、糖尿病合併妊娠などの場合である。
- フロセミド
- フロセミドは降圧利尿剤であり、肝性昏睡、スルフォンアミド誘導体過敏症、体液中のナトリウム、カリウムが減少している場合、無尿時に禁忌である。
- ジゴキシン
- ジゴキシンは心不全治療薬であり、ジギタリス中毒や房室ブロック、洞房ブロック、閉塞性心筋疾患に禁忌である。
正解 1
誤嚥とは、食物や異物を気管内に飲み込んでしまうこと。また、異物を消化管内に飲み込んでしまうことである。
- 肺炎
- 誤嚥によって口腔内細菌が肺に入り、誤嚥性肺炎を引き起こす。
- 胃炎
- 誤嚥との直接的な関連はない。
- 肝炎
- 誤嚥との直接的な関連はない。
- 膵炎
- 誤嚥との直接的な関連はない。
【問題13】 ストレッチャーによる患者の移動の写真で適切なのはどれか。
正解 2
ストレッチャー接触の予防、患者の容態確認、患者の不安軽減、これらが可能な方法をとる。
- ストレッチャーの前後に一人ずつ配置し、前方や患者の容態をきちんと確認する。患者の視野が広がるように、患者の足を進行方向に向けて移送する。
正解 4
オートクレーブとは、高温高圧下で化学反応を行わせるための耐熱耐圧容器、あるいはその装置を用いて行う処理のことである。
- 乾熱滅菌
- 160〜200℃の乾熱空気中で30分〜2時間加熱する事により、微生物を殺滅する方法である。金属・陶磁器・ガラス等、熱に安定なものの滅菌に用いられる。
- ろ過滅菌
- 微生物をろ過によって除去する方法で、加熱法や照射法が適用できない気体および液体に適用される。
- ガス滅菌
- 気密に保たれた滅菌内缶に滅菌物を入れ、これに気化された酸化エチレンガスを導入する。酸化エチレンガス滅菌は低温、低湿度で行われるため、カテーテル、チューブ類、ゴム製品などのように加熱によって劣化するものや、湿状態にさらすことが好ましくないものの滅菌に適している。
- 高圧蒸気滅菌
- 2気圧下の飽和蒸気圧下で121℃で15〜20分間滅菌する。ガラス器具・リネン類・金属製品・衣類・ガーゼなどの滅菌に用いる。汚染医療廃棄物の処理にも用いるが、耐熱性のない物には適していない。
正解 3
輸液ポンプの周辺で携帯電話、無線機器、電気メス等を使用すると、誤作動が生じる可能性がある。
- 異物の除去
- 感染の防止
- 輸液速度の調整
- 輸液ポンプの主目的は輸液速度の調整と正確な量の輸液である。
- 薬物の効果判定
午後
【問題1】 脂質1gが体内で代謝されたときに生じるエネルギー量はどれか。
正解 2
蛋白質や炭水化物では4kcal/gである。
- 4kcal
- 9kcal
- 脂質1gが体内で代謝されたときのエネルギー量は9kcalである。
- 14kcal
- 19kcal
【問題2】 国民健康保険一般被保険者本人の自己負担割合はどれか。
正解 3
国民健康保険の自己負担割合は、よく出題される基本的な問題である。
- 1割
- 2割
- 3割
- 国民健康保険の自己負担割合は、一般被保険者においては本人、被扶養者ともに3割である。
- 4割
【問題3】 保健師助産師看護師法で規定されている看護師の義務はどれか。
正解 2
看護師の触法行為についての出題は強化される傾向にあるので、「保健師助産師看護師法(保助看法)」の内容をよく理解しておく必要がある。
- 看護研究
- 看護研究は大切なことであるが、保健師助産師看護師法には定められていない。
- 秘密の保持
- 保健師、看護師または准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師・看護師または准看護師でなくなった後においても、同様である。
- 記録の保存
- 看護記録の2年間の保存は医療法によって義務付けられているが、保健師助産師看護師法には定められていない。
- 関係機関との連携
- 関係機関との連携も重要ではあるが、保健師助産師看護師法には定められていない。
正解 3
在胎週数に相当する体重を有する新生児をAFD児、在胎週数と比較して体重の小さい新生児をSFD児という。
- 3,000g未満
- 2,750g未満
- 2,500g未満
- 出生時の体重が2,500g未満の新生児のことを低出生体重児という。また、出生体重が1,500g未満の新生児を極低出生体重児、1,000g未満(及び妊娠期間満28週未満)の新生児を超低出生体重児という。
- 2,250g未満
正解 3
老年期の運動機能、感覚機能の変化について理解しておく必要がある。
- 視野は拡大する。
- 視野は縮小する。
- 唾液量は増加する。
- 唾液量は分泌低下する。
- 皮膚感覚は低下する。
- 温度覚、触覚、痛覚等の皮膚感覚が低下する。
- 聴力は低音域から低下する。
- 聴力は高音域から低下する。
【問題6】 最終月経の初日を0日とすると分娩予定日は何日目か。
正解 2
分娩予定日の概算法として、ネーゲレの計算法がある。(最終月経月から3を引くか9を足し、月経の初日に7を足す)
- 260
- 280
- 妊娠の期間は、最終月経の初日から約280日(40週)で、排卵から約266日である。
- 300
- 320
正解 1
チアノーゼは皮膚や粘膜が青紫色である状態で、心肺疾患の症状の一つである。
- 口唇
- チアノーゼは口唇や爪床で確認できる。
- 耳介
- 頭皮
- 眼球
正解 4
成人が排出する尿量は、1日約1000〜2000mLである。
- 100ml/日以下
- 1日の尿量が100mL以下の場合は無尿である。
- 200ml/日以下
- 300ml/日以下
- 400ml/日以下
- 1日の尿量が400mL以下の場合を乏尿という。
正解 4
健康な人では感染症を起こさないような病原体(弱毒微生物・非病原微生物・平素無害菌)が原因で発症する感染症のことである。
- 麻疹
- 麻疹ウイルスによる感染症であり、健康な人でも感染する。
- インフルエンザ
- インフルエンザウイルスによる急性感染症の一種であり、健康な人でも感染する。
- マイコプラズマ肺炎
- マイコプラズマは細菌の一種で、マイコプラズマ肺炎は主に飛沫感染で起こる。健康な人でも感染する。
- ニューモシスチス肺炎
- 真菌であるニューモシスチス・ジロヴェチによって引き起こされる肺炎であり、免疫低下時に発症する。日和見感染症の一つである。日和見感染症としては、細菌性日和見感染症(MRSA感染症、緑膿菌感染症、セラチア感染症、クレブシェラ菌感染症、レジオネラ肺炎等)、真菌性日和見感染症(カンジダ症、アスペルギルス肺炎、クリプトコッカス感染症等)、原虫性日和見感染症(トキソプラズマ症等)、ウイルス性日和見感染症(ヘルペス感染症、サイトメガロウイルス感染症等)がある。
正解 2
注射は基本的には医師、または医師の指示を受けた看護師にしかできない。
- 皮内
- 皮下
- 皮下注射に限っては、例外的に自己注射が認められているものがある。代表的なものとして、インスリンや成長ホルモン剤がある。
- 筋肉内
- 静脈内
【問題11】 体温測定部位で外部環境に最も影響されにくいのはどれか。
正解 1
表層の温度は環境温度の影響を受けやすい。
- 直腸
- 外部環境の影響を最も受けにくいのは直腸である。
- 口腔
- 腋窩
- 頸部皮膚
【問題12】 成人女性に導尿を行う際のカテーテル挿入の長さはどれか。
正解 2
男性の場合の挿入の長さは、16〜20cmである。女性の場合、10cm以上の挿入は膀胱内壁を傷つける可能性がある。
- 1〜3cm
- 4〜6cm
- 女性の場合、仰臥位で両脚を曲げ、両膝を屈曲して脚を開く。カテーテルは外尿道口から4〜6cm挿入する。男性の場合は、仰臥位で両脚を伸ばす。
- 7〜10cm
- 11〜14cm
【問題13】 スタンダードプリコーションで感染源とされるのはどれか。
正解 3
感染症の有無に関わらず、患者の血液、汗を除く全ての体液分泌物、排泄物、粘膜、損傷した皮膚を感染源とみなし対処する。
- 爪
- 頭髪
- 血液
- 血液はスタンダードプリコーションの対象である。
- 傷のない皮膚
正解 4
基本的な問題である。食間の意味を間違えないように注意する。
- 食事中
- 食間は「食事の間」という意味ではない。
- 食後30分
- 食後服用である。
- 食前30分
- 食前服用である。
- 食後120分
- 食間服用は、食事と食事の間で、食後2時間ぐらいが目安である。
正解 2
自動体外式除細動器のことである。
- 止血
- 除細動
- 心室細動の際に機器が心電図の自動解析を行い、必要に応じて除細動を与える。AEDの使用は、医療従事者以外の一般市民にも認められている。
- 気道確保
- 静脈確保