第99回看護師国家試験一般問題・状況設定問題解説(午前問題91〜105)

次の文を読み91〜93の問いに答えよ。
 62歳の男性。58歳の妻と25歳の長男との3人暮らし。脳梗塞で左片麻痺があり、要介護3。言葉は不自由であるが意思疎通は図れる。現在、通所介護を週1回、病院のリハビリテーションを月2回。訪問看護を週1回利用している。通所介護では仲間との交流があり満足している。リハビリテーションでは主に立位保持と車椅子移乗練習を行っている。主な介護者は妻で介護を始めて2年になるが、健康状態は良好である。ケアプランの総合的な援助の方針は「安全で自立した生活を支援する」である。

【問題91】 看護目標で最も優先度が高いのはどれか。

正解 1

  1. ADLの維持
    • ADLとは「Activities of Daily Living」の略で、食事、排泄、着脱衣、入浴、移動、寝起きなど、日常の生活を送るために必要な基本動作をいう。ADLを維持することで、廃用症候群の予防にもつながる。
  2. 関節拘縮予防
    • ADLを維持することが関節拘縮予防につながる。
  3. 褥瘡発生予防
    • ADLを維持することが褥瘡発生予防につながる。
  4. 地域社会との交流
    • 通所介護で仲間との交流があり満足しているので、孤独は感じていない。

【問題92】 これまでは通所介護と自宅とで週1回ずつ入浴し、月に一度は息子も手伝っている。妻から「最近腰が痛くて、お風呂の介助が負担になってきました。どうしたらよいでしょうか」と相談があった。訪問看護師の対応で最も適切なのはどれか。

正解 2

  1. 「入浴は通所介護だけにしましょう」
    • 入浴の回数を減らすことは望ましくない。
  2. 「ケアマネジャーと相談してみましょう」
    • ケアマネジャーに相談し、入浴方法の改善や福祉用具の導入について検討する。
  3. 「自宅での入浴は息子さんに任せましょう」
    • 息子の生活にも配慮すべきであり、一緒に問題解決できるように考えていく必要がある。
  4. 「地域包括支援センターに相談しましょう」
    • 地域包括支援センターは、高齢者への総合的な生活支援の相談窓口であるが、まずはケアマネジャーに相談するのが先決である。

【問題93】 3か月後、ひとりで車椅子移動ができるようになった。男性は「自分の行きたいところに出かけて気分転換したい」と言う。自立度をさらに高めるために、介護保険で利用できるサービスで適切なのはどれか。

正解 1

  1. 電動車椅子の貸与
    • 電動車椅子の貸与は、介護保険で利用できるサービスである。
  2. タクシー料金の助成
    • 介護保険で利用できるサービスではない。各自治体により助成の対象や方法は異なる。
  3. ホームヘルパーの派遣
    • 介護保険で利用できるサービスである。ただし、一人での外出が困難な場合の外出援助であり、この場合では適切でない。
  4. ガイドヘルパーの派遣
    • 介護保険で利用できるサービスではない。ガイドヘルパー(移動介護従事者)は、視覚障害者、全身性障害者、知的障害者の移動介助を行う。ホームヘルパーは、介護保険法における資格であるが、ガイドヘルパーは、自立支援制度上の資格である。

次の文を読み94〜96の問いに答えよ。
 78歳の女性。82歳の夫と2人暮らし。5年前に乳癌と診断され、乳房の切除術を受けた。最近、肺とリンパ節への転移が認められたため、外来で化学療法が始まった。要介護2で、室内は手すりで歩行が可能であるが、通所などの外出時は疲れやすいため車椅子を使用している。夫のADLは自立しており、通院の介助をしている。

【問題94】 訪問看護を開始したところ「化学療法の後は気持ちが悪く、胸が痛くなる」と訴えた。主治医からは症状を軽減するための薬剤が処方されている。症状への対応で正しいのはどれか。2つ選べ。

正解 1,5

  1. 症状の内容や程度を聞き取り主治医に報告する。
    • 本人から症状の内容や程度を聞き取り、主治医に報告するのは、アセスメントの基本であり、適切な対応である。
  2. 在宅では症状管理が困難であるため入院を勧める。
    • 主治医から症状を軽減するための薬剤が処方されており、在宅での病状管理は可能である。すぐに入院を勧める必要はない。
  3. マッサージや音楽療法などの補助療法は行わない。
    • 補助療法で病状が緩和する可能性もある。
  4. 治療している段階なので麻薬性鎮痛薬は使用しない。
    • 治療している段階でも麻薬性鎮痛薬を使用する場合がある。
  5. 主治医との連携のもとに看護師が処方された薬剤を調整する。
    • 主治医の指示に従って、看護師が処方された薬剤を調整することもある。

【問題95】 3か月後、肝臓への転移が認められた。体力が低下したため化学療法は中止となり、訪問診療が開始となった。食事とトイレ以外は臥床しがちになったが、介護用ベッドの利用は「病院のようで嫌だ」と拒否している。食事摂取量が減り、血液検査で総蛋白6.0g/dl、アルブミン3.0g/dlであった。訪問看護師が訪問すると布団で尿失禁していた。適切なのはどれか。

正解 3

  1. 日中の坐位時間を増やすよう勧める。
    • 食事摂取量が減り、体力も低下している。無理に坐位時間の増加を強いる必要はない。
  2. 介護用ベッドを導入するよう勧める。
    • 介護用ベッドの利用は本人が拒否しており、適切でない。
  3. 食べたいものを食べるように勧める。
    • 癌末期であり、体力も低下している。本人の希望をできる限り叶えるためにも、食べたいものを食べてもらうようにする。
  4. トイレには行かずおむつに排尿するよう勧める。
    • 尿失禁があるからといって、すぐにおむつを使用することはない。早めの排尿やポータブルトイレの使用などの失禁対策を講じるべきである。

【問題96】 2週後、仙骨部に2×3cmの水疱が認められた。日中、傾眠傾向となったが声かけには覚醒し、介助で起き上がることはできる。会話は明瞭で苦痛症状はない。食事摂取量は少なく、血液検査で総蛋白5.0g/dl、アルブミン2.7g/dlとなった。褥瘡への対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 2,3

  1. 入眠中は2時間ごとに体位変換するよう夫に依頼する。
    • 本人、介護者の体力回復のためにも、充分な睡眠が必要である。無理に2時間ごとの体位変換を強いる必要はない。
  2. 経口栄養剤の処方について主治医と調整する。
    • 栄養状態の低下が褥瘡の悪化を促進していると考えられる。経口栄養剤の処方は適切である。
  3. 体圧分散マットに交換することを提案する。
    • 褥瘡の発生・悪化を予防するために、褥瘡部位の体圧分散は有効である。
  4. 訪問介護を導入し、褥瘡処置を依頼する。
    • 褥瘡処置は訪問介護の範囲外である。
  5. 直ちに膀胱留置カテーテルを留置する。
    • 自力排尿が可能な間は、カテーテルの留置はしない。膀胱留置カテーテルは最終的な選択であり、安易に留置しない。

次の文を読み97〜99の問いに答えよ。
 48歳の男性。電気製品の販売員。労作時の息切れと易疲労感とを主訴に来院し、拡張型心筋症と診断され入院となった。入院時の脈拍112/分。血圧98/82mmHg。起坐呼吸をしている。

【問題97】 最も起こりやすいのはどれか。

正解 2

  1. 膿胸
    • 膿胸とは、胸膜内に膿が溜まった状態である。細菌性肺炎や胸腔内手術が原因で起こることが多い。
  2. 血性泡沫痰
    • 心不全による肺水腫を合併した場合に起こることが多い。
  3. 下肢静脈瘤
    • 心不全増悪時に下肢の浮腫が出現することはあるが、すぐに下肢静脈瘤が起こるわけではない。
  4. 心タンポナーデ
    • 心タンポナーデは、心嚢に心嚢液が溜まり、心不全を起こす状態である。心嚢液が増加することはあるが、心タンポナーデを起こす可能性は高いとはいえない。

【問題98】 心不全症状と不整脈に対する薬物療法で症状が改善したため退院となった。退院2週後、出勤途中に駅で突然意識を消失し、救急搬入された病院で完全房室ブロック(V度房室ブロック)によるアダムス・ストークス症候群と診断された。このときの心電図はどれか。

正解 3

  1. 第99回看護師国家試験一般問題解説98図1
    • P、QRS、T波が規則正しく現われており、洞調律の心電図である。
  2. 第99回看護師国家試験一般問題解説98図2
    • 第1〜3心拍は洞調律であるが、第4心拍目は早い時点で出現しており、期外収縮である。第1〜3心拍と波形が同じであるので、上室性期外収縮と考えられる。
  3. 第99回看護師国家試験一般問題解説98図3
    • 完全房室ブロックは、心房からの興奮が心室に全く伝導されない状態である。P波とQRS波が相互に無関係に独自のリズムで出現しており、完全房室ブロックの心電図である。
  4. 第99回看護師国家試験一般問題解説98図4
    • P波がみられず、RR間隔は不規則である。心房細動の心電図である。

【問題99】 その後意識が回復し、退院に向け恒久的ペースメーカー植え込み術が行われた。職場復帰後、売り場担当を避けた方がよい電気機器はどれか。

正解 3

  1. パソコン
  2. 電気毛布
  3. 電磁調理器
    • 電磁波によりペースメーカーの作動に異常を来たす恐れがあるので、電磁調理器の売り場担当は避けた方がよい。
  4. ICレコーダー

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 60歳の男性。会社役員。10年前にC型肝炎と診断され通院治療を続けている。1か月前の定期受診で肝細胞癌を指摘され、TAE〈肝動脈塞栓療法〉を受けることとなった。

【問題100】 TAEの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。

正解 2,4

TAEは、肝臓内の腫瘍を栄養する動脈までカテーテルを進め、動脈の血流を遮断し、腫瘍細胞を壊死させる方法である。

  1. 腹部を穿刺して行う。
    • 鼠径部の大腿動脈からカテーテルを挿し込むので、腹部を穿刺することはない。
  2. 治療後5〜6時間穿刺部を圧迫する。
    • 穿刺部を圧迫止血し、床上安静する。
  3. 治療後1日は絶食である。
    • 飲水は治療後すぐに可能、食事摂取は当日から可能である。
  4. 治療後に発熱することがある。
    • 副作用として腹痛、発熱、吐気、食欲不振などがある。
  5. 治療ではエタノールを使用する。
    • 経皮的エタノール注入療法で使用する。TAEでは使用しない。

【問題101】 治療前の血液検査ではアルブミン2.8g/dl、AST(GOT)123IU/l、ALT(GPT)130IU/l、プロトロンビン活性(PT%)58%、(基準80〜120)であった。TAE後の状態で正しいのはどれか。2つ選べ。

正解 2,3

  1. プロトロンビン活性が改善する。
    • プロトロンビン活性は、血液凝固に関する指標である。TAEにより正常細胞が影響を受け、肝機能が一時低下するので、プロトロンビン活性はさらに悪化する可能性がある。
  2. 血栓が発生する危険性がある。
    • 血栓が生じる危険性があるので、足背動脈の触知など、下肢の状態を観察する。
  3. 止血しづらい可能性がある。
    • 血液凝固機能が低下しているので、止血しづらい可能性がある。
  4. 蛋白質合成機能が改善する。
    • 肝機能の低下に伴い、蛋白質合成機能も低下しやすい。
  5. ALT値が改善する。
    • 肝細胞が壊れることで、ALT値は上昇する。

【問題102】 順調に経過し、明日退院予定となった。退院指導で適切なのはどれか。

正解 1

  1. むくみや体重の変化に注意する。
    • 肝機能の低下により腹水が溜まり、体重が増加することがある。
  2. 食直後の運動は効果的である。
    • 食直後の運動により、肝臓への血流量が低下するので、適切でない。
  3. 食事で鉄分の摂取を増やす。
    • 鉄分の摂取を増やす必要はない。肝機能の状態に応じて塩分の制限をする。
  4. 半年間の休職を勧める。
    • 職場復帰の時期は、退院後の回復状況による。退院指導としては適切でない。

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 62歳の男性。妻との2人暮らし。55歳から高血圧で内服治療中。朝の散歩を日課としていたが、2日前から歩行時に右下肢がもつれる感じがあった。今朝の散歩時、立位がとれない状態になったため、妻に伴われて救急外来を受診した。頭部CTで左硬膜下血腫が脳実質を圧迫しており、緊急手術目的で入院した。入院時、意識は清明。体温36.7℃。呼吸数16/分。脈拍66/分。血圧140/70mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%。瞳孔両側2mm、対光反射は正常。頭痛と嘔吐とはなく、全身状態も安定していた。

【問題103】 手術開始が2時間後と決まった。意識状態に変化はない。手術が開始されるまでに最も出現しやすい症状はどれか。

正解 1

  1. 頭痛
    • 頭蓋内圧亢進症状であり、出現する可能性がある。
  2. 頻脈
    • 頭蓋内圧が亢進した場合、収縮期血圧の上昇により、徐脈になることはあるが、頻脈は考えにくい。
  3. 体温上昇
    • 視床下部の体温中枢の障害により過高熱となることがあるが、この場合では考えにくい。
  4. 左下肢のしびれ
    • 左硬膜下血腫であるので、右下肢のしびれはあるが、左下肢のしびれは考えにくい。

【問題104】 医師から手術が必要と説明を受けた妻は「右足がもつれただけで、緊急手術になると聞いて頭が真っ白になり、医師からの説明も何も聞こえませんでした」と看護師に話す。妻への説明で最も適切なのはどれか。

正解 3

  1. 「命にかかわらない右足のことは今は考えないでください」
    • 最初の衝撃から現実認知に移行し始めている段階であり、否定的なアプローチは適切でない。
  2. 「手術は2時間後の予定ですから落ち着いてください」
    • 落ち着いてくださいと言われても落ち着ける状況ではなく、適切でない。
  3. 「手術をすれば状態が改善する可能性があります」
    • 状態が良くなることをイメージさせることで、危機を乗り越える動機付けになる。適切なアプローチである。
  4. 「奥さんが動揺してはいけません」
    • 動揺するなと言っても無理であり、家族の心理を理解できていない。

【問題105】 左穿頭血腫洗浄ドレナージ術が施行され帰棟した。術直後の観察では、意識は刺激しなくても覚醒しているが、いまひとつはっきりしない状態である。頭痛と嘔吐とはない。体温36.7℃。呼吸数20/分。脈拍82/分。血圧190/90mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)99%。硬膜下ドレーンから少量の排液がみられる。術直後のアセスメントで正しいのはどれか。

正解 1

  1. 血圧を下げる必要がある。
    • 血圧がやや高い。術後出血しないためにも、脳濯流圧を維持しつつ、血圧を下げる必要がある。
  2. 意識レベルはJCSII-10である。
    • 「刺激しなくても覚醒しているが、いまひとつはっきりしない状態」は、JCSI-1に相当する。
  3. ベッドの30度挙上が必要である。
    • 頭蓋内圧亢進を防ぐために、15〜30度の頭位挙上は有用であるが、挙上しすぎは脳濯流圧が低下する場合があり、必ずしも30度の挙上が必要とはいえない。
  4. 頭蓋内圧亢進症状が出現している。
    • 頭痛、嘔吐はなく、徐脈もみられない。呼吸、心拍数も許容範囲の増加であり、頭蓋内圧亢進症状が出現しているとはいえない。

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